20 / 146

愛のない行為の名前

ベリアル様が小さな小瓶を取り出す。 その中には液体が入っていた。 ベリアル様はその小瓶を傾け、中身を手に取るとその液体を指に取り、お尻の奥へと差し入れてくる。 「ヒィッ!…ひっく…な、何…!?」 あまりの痛みと不快感に悲鳴が漏れる。 液体で濡れているとはいえ、無理矢理に侵入してきた指が出し入れされ、初めての感覚にガクガクと手足が震える。 悲鳴を上げている内に、指を二本に増やされて、痛みに慣れれば三本と増やされ泣き叫んだ。 「あぁぁっ!あぁぁ…!」 普段閉じられている場所を無理矢理こじ開けられる痛みも感覚も、今まで経験した事のないものだった。 どれ位の間、泣き叫んだのか分からない。 長かったのかもしれないし、短い時間だったかもしれない。 一瞬の様な、永遠の様な時間の後、ずるずると指を引き抜かれた。 その頃には、涙と涎で顔はぐしゃぐしゃだった。 「ここに今から私を受け入れてもらいます」 ベリアル様に言われて、思い出す。 男同士は愛し合う時、そこを使うらしいと、いつだか噂好きの仲間の天使達が話しているのを聞いた事がある。 だけれども、そんな事は自分には無縁だと思っていた。 一日も早く、立派な天使になる事や、自分に与えられた誇り高い職務を全うする事が、自分の全てだったから。 ベリアル様の中心はもう既に猛っていて、美しいお顔からは信じられない程、凶悪な凶器に思えた。 そんなものを後ろに突き入れれば、どうなってしまうのかと恐怖のあまりに思わず出た悲鳴は、喉に引っかかり声にならなかった。 逃げようとする体を押さえつけられ、そのまま無理矢理に挿入される。 「あ゛あ゛あ゛あ゛」 メリメリと音がするのではないかと思う程に、侵入してくるものの圧迫と痛みは激しく、声にならない声が漏れる。 目からはあれだけ泣いたのにも関わらず、涙腺が裂けてしまったのかと思う程にとめどなく涙が溢れた。 そんな事には構わずに、ベリアル様は激しく自身を抜き差しする。 「っ…、流石にきついな。何度か犯せば、その内に慣れるだろう」 恐ろしい事を淡々と告げるベリアル様の声が遠くで聞こえる。 「ひぎっ…あっ…あぁ…、痛い…!助け…、あっあぁ…!!」 「ほら、もっと泣け…。やはり、お前の悲鳴は心地良いな…。壊れるまでは使ってやろう」 愛し合う者同士が体を重ねるのがセックスだと聞いた事がある。 では、これは? これは、何と言うのだろう。 私を傷つける為に抱く、ベリアル様。 そう思うと、何故だか悲しくて、苦しくて。 意識は闇の中へと溶けていった。

ともだちにシェアしよう!