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痛み
深い暗い闇の中から意識が浮上する。
ひどく、体が重い。
頭も目も身体もどこもかしこも痛い。
指先一本さえ動かすのが辛い。
「私は、死んでしまったのでしょうか…?」
何度もベリアル様に貫かれ、自分は死んでしまったのではないかと思い呟くと、クスクスと笑い声が聞こえる。
「あれしきの事で死ぬものか。天使というのは、随分と弱々しいのだな。まるで脆弱な小鳥だ」
「ベリ…アル…さま」
擦れた声が咽奥から漏れた。
ここはベリアル様のお城だったっ思い出して、まだ生きている事に安堵する。
だって、体を引き裂かれる様なあまりの痛みや苦しさに、もう自分は死んでしまうのだと思っていたから。
「随分と泣き叫んで声が枯れているな。また上手く啼ける様に、薬を用意させましょう。…それにしても、随分と見窄らしい姿だな」
散々泣き叫んで、涙と涎と鼻水や、体液で汚れてしまったのだと自分の身体を見やれば、シーツにべっとりと血がついていて、サーッと血の気が引いていく。
「ひっ…」
それを傍らのベリアル様がさも可笑しそうに笑う。
「少し切れただけだ、天使は血くらいで随分と面白い反応をする。…今日は何やら気分が良い、私も湯浴みをするから洗ってやろう。後ろにも薬をつけてやる」
治ったらまた引き裂いてやろう、と耳元で囁かれ、また恐怖に震えれば、ベリアル様は楽しそうに笑った。
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