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罪
(この感情は、何と言うのでしょう?)
暖かくて、凄くドキドキするのに、胸が苦しくて、瞬きをすれば涙が零れてしまいそう。
(苦しいです…、神様…)
暗い、暗い、魔界。
ここは、天界に比べてあまりにも静かで寂しい。
心細さと相まって、心がひどく苦しい…。
美しい花弁を優しく撫でた。
そうすれば、少しだけ自分の心が慰められる気がした。
ふいに、自分の上に影が被さる。
上を見上げると、そこにはベリアル様が立っていた。
「ベリアルさ…」
ベリアル様はこちらを見下ろし、にっこりと微笑んだ。
その笑顔のあまりの美しさに見惚れてしまう。
そして次の瞬間。
「いっ…あぁっ…!!」
ギリッと音がする程強く、ベリアル様の足が私の手ごと花を踏みしめた。
「部屋にいないと思えば、こんな所にいたのですね」
「ひっ…ぃ…」
左右に足をギリギリと踏みしめられ、痛みに息を飲む。
「勝手に部屋から居なくなるので、貴方を探すのに無駄な時間を費やしてしまったじゃないですか」
「も、申し訳…ございませ…ん…くあっ…!」
グリッと手を踏みにじると、ベリアル様は足を引き、元来た道を引き返していく。
「早く来なさい。殺されたくなければな」
「す…、すぐに参ります…!」
ベリアル様が戻っていった後、自分の手の下を見る。
あれ程美しく咲いていた花が、見る影も無く押し潰されていた。
「あ…、あぁ……」
自分が慰められたくて、この花を頼ったばかりに、
美しい花は死んでしまった。
「ご、ごめんね…!わ、私のせいで、ごめんね…」
涙は枯れる事なく、溢れ出る。
天界を出るまで、こんな悲しみがあるなんて知らなかった。
「ごめんね、ごめんね…」
次にベリアル様に名前を呼ばれるまで、私は地面に這いつくばり、謝り続けていた。
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