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誘惑

私が誘惑なんて出来る筈もない。 そんな事は分かっているのに、ベリアル様は面白がって強引に私の腕を引いて歩き出す。 そして、辿り着いたのはベリアル様の寝室で泣きたくなった。 「ほら、誘ってみろ」 そう言って、ベリアル様はベットの上に座り、喜々として私の反応を見ている。 「う………」 仕方ないので覚悟を決め、ベリアル様の手を握って 「す、好きですっ…」 と、精一杯の気持ちを告げる。 これが、私が出来る精一杯の誘惑だった。 先刻まで楽しそうだったベリアル様の表情は、みるみるうちに呆れたものに変わっていく。 「お前に期待をした私が馬鹿だった」 「も、…申し訳ございません…」 恥ずかしい…。 ベリアル様の期待に添えないどころか、呆れられてしまった。 「まさか、この世の中にあれ程つまらない誘惑があるとはな…」 「か、返す言葉もございません…」 申し訳なさに小さくなっていると、ふいに何かを思いついた様に、ベリアル様がにやりと笑った。

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