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誘惑される

「お前ができないというのならば、私が誘惑するのも悪くない」 「えぇ!?」 「いくら見習いとはいえ、ミカエルに直接仕えている天使の中から堕天使(だてんし)が出たとなれば、天界を騒がすスキャンダル位にはなるだろう」 「そ、そんなっ!」 そんな事になればミカエル様に御迷惑がかかってしまう…! 自分のせいでミカエル様や周りの天使達が大変な事になっては、申し訳ないではすまないと慌てる。 「神もミカエルもどうでもよくなれば、快楽だけを求める様になるだろう。淫魔(いんま)の様に堕落(だらく)した天使を何人も知っている。あれは、悲惨(ひさん)だぞ。まぁ、本人達は幸せだろうがな」 サーッと血の気が引いていく。 「せ、僭越(せんえつ)ながら、私はベリアル様をお(した)いしている身。ベリアル様に誘惑なんてされてしまっては、きっとすぐに夢中になってしまいます!」 「ほぉ」 「な、なので、その…、 誘惑するのをやめてください!!」 精一杯の声を振り絞って叫んだ。 シン…と静寂(せいじゃく)が訪れる。 怒らせてしまったかと身を固くするが、次に聞こえてきたのはベリアル様の笑い声だった。 「く、くくく、まさか、悪魔に誘惑をするなと言うとはな。天使に神に仕えるのをやめろと言う様なものだ」 「も、申し訳ございません…!」 「全くお前は私を退屈させないな。まぁ、いい…。今日の所は勘弁してやろう。その代わりに私に付き合え」 「は…はい…、ありがとうございます!わ、私にできる事があれば…」 そう言っているうちに、ベリアル様は自身の腰紐を抜き取り、私の手首を手早く拘束してしまう。 「あ……、あの…………?」 「私の退屈しのぎに付き合え」 何だか良くない予感に、背中を汗が伝っていった。

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