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開けられた籠
何だか恐ろしくて身が竦む。
その視線は、まるで物か何かを品定めする様なものだったから。
「なかなか愛らしい見目をしているな」
「見た目はな」
ベリアル様に言われて、申し訳ない気持ちになる。
案に何も役に立てていないと言われているのだ。
「最初に比べたらまだマシになったが、奉仕も満足に出来なければ、自分から誘惑すら出来ん。まぁ、叫び声や泣き顔は悪くはないが…」
「お前の事だ。どうせ酷い扱いをしているのだろう」
「知れた事。私は私が楽しむ為に玩具を扱っている。玩具の感情など、関係のない事だ」
「お前に捕まった者には心底同情する」
ベルゼブブと呼ばれた悪魔さんは、私の前まで近づくと私の顎を持ち上げる。
恐怖で震える私を見て、悪魔さんは可笑しそうに笑った。
「なるほど、確かに初々しいな。そんなに怯えなくてもいい。俺はベリアルの様に痛みを与えて喜ぶ趣味はないからな」
「ふっ、褒め言葉と受け取っておく事にしよう」
話すベリアル様は随分と楽しそうで、恐る恐る尋ねてみる。
「あ、あの…、ベリアル様…、此方の御方は…?」
「ああ、此奴はベルゼブブだ」
「おい、長年の親友を紹介するというのに、それだけか?」
「親友…」
ベリアル様と親しげに話しているのも、それならば頷ける。
「ベリアル様の御友人と知らず、すみません!あ、あの…、すぐに、お茶を御用意致します!」
ベルゼブブ様が驚いた顔をして、ベリアル様の方を振り返る。
「お前、この子に身の回りの世話をさせているのか?」
問いかけたベルゼブブ様に、ベリアル様は心底嫌そうな顔をした。
「どうしてもとせがまれて、仕方なくやらせているだけだ」
苛立たしげに言われ、やはりお願いしてお仕事をさせて頂いているのは御迷惑だったのかと悲しくなる。
「ほぉ、仕方なくな…。興味深い事だ」
「ふん」
「・・・コレを借りてもいいか?」
「構わん、持っていけ。欲しければ、くれてやる」
声や表情を少しも変えず、ベリアル様はソレが本か何かの様に、そう言い放った。
だけれど、ベルゼブブ様が指を指しているのは、私だった。
ベリアル様の言葉が信じられなくて、頭の中が真っ白になった。
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