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悲しみの淵
ベリアル様は、まるで何でも無い事の様に、欲しければくれてやると言い放った。
何かまたベリアル様を怒らせる様な事をしてしまったのだろうか?
それとも、もう、私という玩具に飽きてしまったのだろうか?
尋ねたい事は沢山あるのに、
ショックで何も言葉が出て来なかった。
「どうせ、飽きたら殺すだけだ。部屋が汚れずに済む」
「お前は、毎度そうだな。お前が一人殺す度に、掃除に駆り出される俺の部下やお前の奴隷の苦労も考えて欲しいものだ。…ああ、今は奴隷は居ないんだったな」
「お前が気に入って私の城から連れて行った者以外は全て殺したからな」
物騒なお二人の会話に、ベリアル様が恐ろしい悪魔だった事を思い出す。
「全く、悪い癖だ。おいで、ルノア」
溜息を吐くベルゼブブ様に、肩を抱かれて部屋を出る。
部屋を出る間際、ベリアル様の方を振り返った。
だけれど、
ベリアル様は此方を見ず、机の書類に目を通している所だった。
本当に悲しくて、
胸にポッカリと穴が開いた様な気がした。
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