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同じ様な鳥の中の1羽

茫然としたまま、ベルゼブブ様のお城へと連れて来られ、ベットに座る様促される。 言われるがままに腰を下ろせば、先程の事を思い出して、血の気が下がっていく。 「顔色が悪いな、大丈夫か?」 そういえば、慌てていたから気づかなかったけれど、ベルゼブブ様と言えば、ベリアル様と並ぶ三大悪魔の一人で、有名な大悪魔さんだ。 伸びてきたベルゼブブ様の手に、ビクビクと身体が震えると、ベルゼブブ様は苦笑いを浮かべる。 「ベリアルに仕事をくれという位だから、どれ程肝が据わった天使かと思えば、随分と可憐で危うい事だ」 「あ、あの…、べ、ベルゼブブ様…」 「ん?何だ?」 「わ、私は、ベリアル様に捨てられたのでしょうか?」 「ああ、あれは昔からああだ。他人に関心がまるで無い。ベリアルの城で生活をしていたなら分かるだろう。あれは、他人が自分の周りにいるのを酷く嫌がるのだ」 お城にいる間はいつもベリアル様が何かしら意地悪をしてきていたから気づかなかったけれど、そう言われてみれば、自分以外の者をあのお城で見た事は一度も無かったと思い至る。 「たまに気に入る玩具もあるが、すぐに飽きる。飽きれば殺してしまう、その繰り返しだ。だから、あの城には悪魔でさえ恐れて立ち入らないものだ」 あの、広いお城に一人きり。 私だったら、凄く寂しいけれど、ベリアル様は寂しくは無いのだろうかと思う。 「お前の様に見目が麗しい者が、ただベリアルの気紛れで殺されるのは惜しい。だが、私の元へ来たからには、死に怯える事は無い。今日からは俺がお前の面倒を見てやろう」 ベルゼブブ様の言葉に、やはりもうベリアル様の元へは帰れないのだと理解をした。

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