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届かない声
「べ、ベルゼブブ様…!?」
ベルゼブブ様の手が、慣れた手つきで衣服を剥ぎ取っていく。
やはり、えっちな事をするんだと確信して体が震えだす。
「心配せずとも、彼奴の様に酷い抱き方はしない。存分に可愛がってやろう」
するりと肌を撫でられ、ザワザワと肌が粟立つ。
ベルゼブブ様の撫でる手は、ベリアル様が触れるより優しい。
だけれど、粟立つ肌は恐怖と不快感からくるものだ。
きっと、ベルゼブブ様だから嫌なのでは無い。
ベリアル様以外の誰かに触れられるのも、
キスをされるのも、
何故だかたまらなく嫌だった。
「ベリアル様…!ベリアル様…!助けて下さい、ベリアル様…!」
叫んでも、聞こえる筈なんて無い。
助けに来てくれる筈なんて無いと、分かっていた。
私が何の役にも立たないから、
ベリアル様を怒らせたり、
呆れさせてばかりだから、
だから、捨てられてしまった。
「ベリアル様…、ベリアル様…」
そう分かっていても、どうしてもベリアル様が恋しくて、いつまでも泣きながらベリアル様の名前を呼んでいた。
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