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暇潰しの玩具1~ベリアル視点~

書いていた書類から顔を上げると、自然とドアの方に視線が向く。 そんな己の行動に内心舌打ちをした。 城の中がこんなにも静かなのは久しぶりだ。 いつもは、ルノアが慌ただしく彼方此方へと移動をして掃除をする。 そして、時間になると茶の用意をしてくる。 何がそんなに楽しいのか歌まで歌いながら働くルノアに悪戯をして、慌てふためくのを見るのは良い暇潰しになった。 だが、慣れすぎるのも考えものだ。 どうせ、飽きたら殺すつもりだったのだから。 もし、ベルゼブブがルノアを気に入れば、くれてやっても構わない。 天界には戻れないにしろ、いずれ此処から出る事が出来て良かったと思う時が来るに違いない。 此処での生活も、私へのくだらない恋慕もすぐに忘れるだろう。 馬鹿な天使だ。 己を乱暴に扱う悪魔に慕っているなど、世迷い言を。 やはり天使というのは一生かかっても理解出来そうにない。 そんな事を考えていると、不意に部屋のドアがノックされ開かれる。 「ベリアル!邪魔をするぞ!」 私の城を訪れ、勝手に入ってくる者など、ベルゼブブしかいない。 「何ですか、ベルゼブブ…」 それにしても、日に何度も尋ねてくるのは珍しい。 ましてや、手の早いベルゼブブの事。 今頃、ルノアと戯れの最中かと思っていただけに、ベルゼブブの用件に見当がつかなかった。

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