57 / 146
一時の幸せ
結局、どれ程貫かれたのか分からない。
いつの間にか意識を手放した私が気がついた時には、ベリアル様がじっと此方を見つめていた。
「べ、ベリアル様…」
いつから、見つめられていたのだろうかと、恥ずかしさに慌てる。
そんなに見られる程、変な顔で寝ていたのだろうか。
不意に、サラリとベリアル様の手が、私の頭を撫でていく。
ベリアル様に頭を撫でて貰った事なんて初めてで、凄くびっくりする。
その手は凄く優しくて、とても嬉しかった。
自然と笑みがこみ上げてしまう。
そんな私の様子を見て、ベリアル様が問いかける。
「何がそんなに嬉しいのか、理解に苦しむ」
「へへ…」
そんな事を言われても、嬉しいものは嬉しい。
「それほど、私が好きか?」
「す、好きです…!」
「私は、その様な感情を持ち合わせていません。諦めなさい」
「そ、それでも構いません…!ベリアル様のお側に置いて頂けるだけで、それ以上は望みません…!」
「難儀な事だ」
ベリアル様の目は、呆れている様だったけれど、暫く何かを考える様に沈黙した後、諦めた様に溜息を吐いた。
「好きにしろ」
「え?」
「此処に居たければ、勝手にしろと言ったのだ」
それは。
また、ベリアル様のお側にいても良いという事だろうか?
「はい!!」
私は満面の笑顔で力一杯の返事をした。
ともだちにシェアしよう!