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ベルゼブブの来訪

◇◇◇ 「あ…」 掃除の途中。 次の場所に移動しようと、廊下を歩いている時だった。 思わずバケツをひっくり返しそうになる程に驚く。 廊下の向こう側から、ベルゼブブ様が歩いてきたからだ。 「あ…、あの…、い、いらっしゃいませ」 ビクビクと怯えながら、やっとそれだけ言えば、ベルゼブブ様が苦笑いをする。 「やれやれ、随分と嫌われたものだ」 「き、嫌いだなんて、そんな…!」 確かに、この間の事もあって、恐ろしくはあるけれど、嫌いな訳ではないと慌てる。 「心配せずとも、もうお前を連れ帰りはしないから安心しろ」 言われて、少しほっとする。 それが、顔に出たのか、ベルゼブブ様が可笑しそうに笑った。

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