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好きの理由
「それ程、ベリアルが好きか?」
「え!?」
急に聞かれて、顔が紅くなっていくのが、自分でも分かる。
「何とも分かりやすい反応だな」
ベルゼブブ様がクスクスと笑う。
自分がベリアル様を好きなのは確かだけれど、第三者にそれを指摘されるのは、凄く恥ずかしい。
「あの性悪の何処がそれ程好きなんだ?それとも、ベリアルはお前にだけは優しいか?」
何処が、と聞かれると困ってしまう。
思い返してみても、優しくされた記憶はほとんど無い。
だけれど、ベリアル様の笑顔を見ると、胸が痛くて、苦しいのに、もっと触れて欲しいと、涙が溢れそうになる。
「あ、あの、ベルゼブブ様…」
「何だ?」
「恋に理由はいるのでしょうか?」
疑問をそのまま口に出すと、何故だかベルゼブブ様が驚いた顔をする。
「ほぉ、まだ幼い天使かと思っていたが、随分とロマンチックな事を言うのだな」
ベルゼブブ様の言葉で、勘違いをされているのだと気づいて、慌てて首を振った。
「い、いえ!ち、違います!その、恋をするのには、理由が無いといけないという決まりがあるのかと不安になったので…」
「何だ、言葉通りの意味か」
「だから…」
優しくベルゼブブ様が微笑んでくれたので、つい本音を言いそうになって、慌てて口を噤む。
「だから、何だ?」
それでも優しく促されれば、一度は飲み込んだ言葉が、口を滑り出た。
「だから、ベリアル様は、私が思いを伝えても、相手にしてくださらないのかと…」
言葉にすると、胸がズキリと痛んだ。
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