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優しい手

「べ、ベリアル様、御迷惑をおかけして、すみません…!」 私のせいで、またベリアル様に御迷惑をおかけしてしまった。 怒らせてしまったかもしれないと慌てて頭を下げる。 ベリアル様の手が伸びてきて、叩かれるのかと思い、きつく目を閉じた。 だけれど、予想していた痛みは訪れなかった。 「別に、大した事では無い」 ベリアル様の手が、そっと私の頭に触れる。 そして、昨日の様に優しく撫でていく。 (あ…、ベリアル様が、撫でてくれている…) 申し訳ないと思っているのに、嬉しくて、顔が緩んでしまう。 「お前は、撫でられるのが好きなのですね。何が良いのか、私には皆目解せないが…」 「あ、あの、」 「何だ?」 「こ、これは、何かの御褒美ですかっ?」 「…………お前にはこんな事が褒美になるのか?」 興奮気味に聞く私に、ベリアル様は昨日と同じで困った様に笑った。

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