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孤独な悪魔
「熾天使は恐ろしいぞ?神の御前に近いが故、神に命令されれば、昨日まで兄弟の様に育った仲間さえ罪人として魔界へ追いやるのだからな」
「え…?そ、それはどういう事ですか…?」
まるで、実際にあった事の様な台詞に問いかけたけれど、ベリアル様は何でも無い事の様に肩を竦めてみせた。
「そのままの意味だ。お前が憧れている熾天使はそういう者だ。お前も誰彼信用しない事だな」
「でも、ベリアル様はベルゼブブ様の事を信頼されていますよね?」
「別に信頼している訳では無い」
「え?」
「必要に迫られれば、私はベルゼブブを殺す事も厭わないし、ベルゼブブとて同じ様に考えているだろう」
「そんな…」
「あれは気に入った者に対しては御節介だからな。だが、今はそうでも、この先の事等分からん」
仲の良いお二人が争うなんて、とても悲しい。
ベルゼブブ様がベリアル様を裏切るなんて私には思えないけれど、ベリアル様はきっと誰も信用してはいないんだ。
ベリアル様は、ずっとそうやって生きてきたのだろうか?
誰も頼らず、信じず。
そう考えると、とても悲しくて、
涙が溢れた。
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