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一人の魔界

ベリアル様がいないお城は、とても寂しい。 広いお城なのに、私一人だけ…。 私がここに来るまで、ベリアル様はこんなに静かで広いお城で一人だったのかと思う。 可哀想なんて言うと、きっとまた呆れられてしまうけれど…。 お掃除の道具を持ってお城の庭へと降りる。 いつも綺麗に咲いているお花が庭一面に広がっている。 ふと、話し声が聞こえてそちらに視線を移した。 「なんでも、ルシファー様の使いの者がベルゼブブ様の城を訪ねてきたそうだ…」 「そりゃ珍しいな。お二人の仲の悪さは有名なのに…」 「それが、何でも堕天していない天使が魔界に迷い込んだとかで、ベルゼブブ様がその天使を捕まえちまったって噂が流れてるらし………」 「こんにちは!」 挨拶をすると、お庭で作業をしていた悪魔さん二人が勢いよく此方を振り向いた。

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