「俺も噂で聞いた話なんで、本当かどうかは分からないんですが、ベルゼブブ様の元にルシファー様の使いの者が訪ねてきたらしいんです」 「ルシファー様…？」 ルシファー様と言えば、天使だって知らない者はいない。 魔界を統治している、魔王の名前だ。 「ルノア様はご存知ないかもしれませんが、我が主のベルゼブブ様とルシファー様の仲の悪さは魔界では有名で、余程の事がない限り使いが行き来するなんてほぼありません。それが、ここ暫く頻繁にルシファー様の使いの者がベルゼブブ様を訪ねて来ているそうなんです」 「？」 「その理由が、ミカエルに仕えている天使が魔界へ迷い込み、ベルゼブブ様に捕らえられているのではないかと…、ミカエルからルシファー様に捜索の依頼があって、ルシファー様の使いの者が行き来していると、そんな噂を聞いたものですから…」 「ええ！？」 「もしや、ルノア様の事ではないかと…」 実際はベルゼブブ様ではなくベリアル様だし、内容は多少違うけれど、それはきっと私の事だ。 私は、ミカエル様が魔界を探して下さっている事を、その時初めて知った。