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擦れ違う気持ち

「まさか、お前が庭師を誘惑して情報を聞き出し、逃げ出すとはな。私も相当平和呆けしていた様だ」 「…!?」 ベリアル様が何の話をしているのか分からなかった。 ただ、何だか嫌な感じがして、ベリアル様に尋ねる。 「あ、あの…おっしゃっている意味が、分かりません…」 「庭園で庭師の手を握っていたな。私を誘惑してみせた時と同じ様に」 「あっ…」 そこでようやく、私がラルドさんと会話をし、その後噂を聞いて慌てて城を飛び出したのを、ベリアル様がどこかで見ていた事に気がついた。 「私が城を留守にするのを待っていたか?ベルゼブブに連れ戻された様だな?」 「ち、違います!」 「ミカエルの捜索がベルゼブブの所まで及んでいると情報を聞き出して、彼奴の城に向かったのだろう?」 「そ、それは…」 確かに、ミカエル様が私を探していると聞いて、いてもたってもいられずに、城を飛び出したのは事実だった。 けれど、ベリアル様は、私がベリアル様の元から逃げ出す機会を窺っていたと勘違いをしている様だった。 言い淀んだ私に、ベリアル様の表情が落胆した様な、悲しい様なものに変わる。 慌てて弁明をしようと開いた口からは、何の言葉も出てこなかった。 ベリアル様の初めて見る表情に驚いたからかもしれないし。 私がベリアル様の元から逃げ出そうとしていたと思われた事がショックだったからかもしれない。 だけれど、ベリアル様の悲しげなお顔は一瞬の事で、すぐに無機質な表情に変わった。

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