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誤解

「出て行け……!」 「ぇ…」 「貴様の顔等、二度と見たくない…!」 「ベリアル様…!ひぁっ!?」 ベリアル様は軽々と私の体を抱え上げると、そのまま城の入り口の前まで足早に移動する。 「ベリアル様…!違うんです…!痛っ…あぁ…!!」 無理矢理に身体を引きずられて、外に放り出される。 「あ!あぁ!ベリアル様!ベリアル様!」 容赦なく閉められた重い扉に慌てて縋りつく。 だけれど、扉はびくともしなくて、事を理解し、体の熱が徐々に冷えていく。 「お願いします!開けてください!ベリアル様!」 開かない扉を必死に引っ掻いて、ベリアル様の名前を叫ぶ。 けれど、重い扉はそんな事ではびくともせず、それでも何度も扉に爪を立てた。 力尽きて、扉にズルズルと縋りつく。 爪は割れて血が滲んでいた。 「お願い…、ベリアル様…、どうか、お話を…」 涙で視界が見えなくなる。 こんな筈じゃ無かった。 天界へ帰りたいという思いより、ベリアル様のお側にいたいという思いが段々と強くなって、ようやく、魔界で一生を過ごす覚悟ができたのに。 一生、ベリアル様と一緒にいたいと思っていたのに。 こんな風に誤解されて、ベリアル様を怒らせてしまった。 こんな最後は、 あまりにも悲しい。 「お願いです…、お話を…、聞いて…」 途轍もなく胸が張り裂けそうに痛くて、 指先の痛みはちっとも分からなかった。

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