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心の行方~ベリアル視点~
「何を、言っているんです…、まさか…、そんな…」
そんな事があるはずがない。
ルノアは生粋の天使だ。
天界へ帰りたい筈だ。
初めて出会った、あの日。
ミカエルに仕えているのだと誇らしげに名乗ったルノア。
私を好いている様な素振りはあったが、それでも天界へ帰れるとなれば話は変わるだろうと思っていた。
「俺には、あの馬鹿正直なルノアがその場凌ぎの嘘を言う様には思えないが…、何も聞いていないのか?」
「な、何も聞かずに追い出してしまった……」
口から出た声は震えていた。
その事で、自分が酷く動揺している事に気づく。
それに、驚いた。
この自分が、後悔し、動揺している。
その事実に、更にどうしようもなく打ちのめされた。
「このまま、アレを失ってもいいのか?お前があの天使をペットと思っているのか、玩具と思っているのかは知らぬが、誰にも心を許さないお前が、ルノアが来てから随分と楽しそうに見えたが?」
「………………」
「お前が行かぬと言うのならば、俺がルノアを迎えに行く…。だが、その時は正式にルノアは俺が貰い受ける」
「……くっ!」
自分の理性とプライドを必死に振り払い、私は城の入り口へと走りだした。
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