111 / 146

心の行方~ベリアル視点~

「何を、言っているんです…、まさか…、そんな…」 そんな事があるはずがない。 ルノアは生粋の天使だ。 天界へ帰りたい筈だ。 初めて出会った、あの日。 ミカエルに仕えているのだと誇らしげに名乗ったルノア。 私を好いている様な素振りはあったが、それでも天界へ帰れるとなれば話は変わるだろうと思っていた。 「俺には、あの馬鹿正直なルノアがその場凌ぎの嘘を言う様には思えないが…、何も聞いていないのか?」 「な、何も聞かずに追い出してしまった……」 口から出た声は震えていた。 その事で、自分が酷く動揺している事に気づく。 それに、驚いた。 この自分が、後悔し、動揺している。 その事実に、更にどうしようもなく打ちのめされた。 「このまま、アレを失ってもいいのか?お前があの天使をペットと思っているのか、玩具と思っているのかは知らぬが、誰にも心を許さないお前が、ルノアが来てから随分と楽しそうに見えたが?」 「………………」 「お前が行かぬと言うのならば、俺がルノアを迎えに行く…。だが、その時は正式にルノアは俺が貰い受ける」 「……くっ!」 自分の理性とプライドを必死に振り払い、私は城の入り口へと走りだした。

ともだちにシェアしよう!