112 / 146
血の跡~ベリアル視点~
慌てて外に飛び出したが、そこにはルノアはいなかった。
「くそっ…!何をしているんだ…、私は…!」
馬鹿馬鹿しい。
ただの子供の天使一人に、この様に慌てふためいて。
今の己の何と滑稽な事か。
たかが小鳥1羽逃げたとて、何が変わる訳でもない。
元々魔界に存在しない鳥。
捨てた鳥だ。
今更居なくなったとて、ただ、元の静かな暮らしに戻るだけだ。
中へ戻ろうと踵を返した時だった。
扉に、赤黒い染み。
手でなぞると、もうそれは乾いていたが、紛れもない血の跡だった。
それが、上から下へと縦に何本も走っている。
「っ…」
必死に開けてくれと泣いて、何度も扉を引っ掻いたのだろう。
「馬鹿め…!」
無駄な事をして、何と愚かなものだ。
そして、そんな馬鹿げた事に動揺している私はもっと愚かだ。
羽根を広げて地面を蹴り、魔界の空へと飛び上がった。
ともだちにシェアしよう!