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焦り~ベリアル視点~
城の周りやベルゼブブの城までの範囲をを探してみたが、ルノアの姿は見当たらなかった。
もしや、もう既に他の魔物や悪魔に殺されてしまったのでは?
ふと過ぎった想像に、内心舌打ちをする。
この自分が、恐れている。
ルノアを失いたくないと思っている。
それは、認めたくはない事実だった。
情が生まれれば、弱みになる。
魔界で生きていくには、誰も信じず、己の力のみ信じていれば良かった。
そして、それは自分には容易な事だと思っていた。
だが、ルノアが現れて、それが揺らぎ始めた。
どれだけ痛めつけても、突き放しても、ルノアは私を慕っているとついてくる。
それに恐怖を感じていたのかもしれない。
ルノアにではない。
ルノアを特別だと思い始めている自分にだ。
ベルゼブブの所へやっても、ルノアは私の所へ帰ってきた。
それを、心のどこかで喜んでいたのかもしれない。
己が突き放しておきながら、なんとも面妖な事だと思う。
それも、今となっては、いい笑い話だ。
自らの手で、小鳥を外へと逃がしてしまったのだから。
「不様だな」
自分への嘲笑は、魔界の闇に呑み込まれていった。
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