122 / 146

焦り~ベリアル視点~

城の周りやベルゼブブの城までの範囲をを探してみたが、ルノアの姿は見当たらなかった。 もしや、もう既に他の魔物や悪魔に殺されてしまったのでは? ふと過ぎった想像に、内心舌打ちをする。 この自分が、恐れている。   ルノアを失いたくないと思っている。 それは、認めたくはない事実だった。 情が生まれれば、弱みになる。 魔界で生きていくには、誰も信じず、己の力のみ信じていれば良かった。 そして、それは自分には容易な事だと思っていた。 だが、ルノアが現れて、それが揺らぎ始めた。 どれだけ痛めつけても、突き放しても、ルノアは私を慕っているとついてくる。 それに恐怖を感じていたのかもしれない。 ルノアにではない。 ルノアを特別だと思い始めている自分にだ。 ベルゼブブの所へやっても、ルノアは私の所へ帰ってきた。 それを、心のどこかで喜んでいたのかもしれない。 己が突き放しておきながら、なんとも面妖な事だと思う。 それも、今となっては、いい笑い話だ。 自らの手で、小鳥を外へと逃がしてしまったのだから。 「不様だな」 自分への嘲笑は、魔界の闇に呑み込まれていった。

ともだちにシェアしよう!