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貴方の痕跡

「あの、今日出会ったばかりですし…」 「愛に時間は関係ない!」 「そ、それに、私、貴方の名前も知らな…」 「バルトだ!」 「………」 ど、どうしたら良いの………!? 全然諦めてくれない…! 「ルノアは俺の事がタイプじゃないのか?」 「そ、そういう訳じゃ…」 「じゃあ、これから好きになるかもしれないだろ!?」 きっと、私の断り方が悪いから、変な期待を持たせてしまっているんだ…。 ここは、はっきり断らなければ…! 「あ、あの…!!」 断ろうと口を開いた時だった。 耳の尖った悪魔さんが、バルトさんの肩を掴んだ。 「おい、バルト…、この子の髪飾りって、滅茶苦茶高価なもんじゃねぇか?」 「え?」 指摘されて、自分の髪に触れた。 「あ………」 ひんやりとした、金属と石の感触。 髪飾りをつけたままだった事を思い出して。 胸に熱いものが込み上げた。

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