130 / 146
恐ろしいのは
そうだ、私はただのペットだった。
ベリアル様が近頃、優しい気がして、忘れていた。
言葉にしたら、また悲しくなって涙が溢れた。
「なら、尚更、俺の城へ来い!」
バルトさんが私の腕を強い力で掴んだ。
びっくりして、慌てて手を引こうとするけれど、バルトさんの手はびくともしない。
「や、やめてください…」
「今は嫌がっていても、そのうちに俺に夢中にしてやる!」
怒っている様子のバルトさんが恐ろしくて、体が震える。
でも、本当に恐ろしいのは、バルトさんじゃない。
きっと、バルトさんは私を心配してくれている。
だから、こんなに怒っているんだ。
バルトさんは、近くでみると、とても格好いい容姿をしていて、私なんかじゃなくても、沢山お嫁さんになりたい方がいるんじゃないかと思う。
きっと、本当に私の事を大切にしてくれるのかもしれない。
バルトさんがいう様に、バルトさんのお嫁さんになれば、私はバルトさんに夢中になるのかもしれない。
だけど…、
バルトさんの事を、好きになってしまうのが、
ベリアル様への気持ちをいつか忘れてしまうのが、
たまらなく恐ろしかった。
ともだちにシェアしよう!