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第3話

 目覚めた青は、部屋に用意された籠の中で眠るユキを見つけて駆け寄る。  ユキも目を開け青をみつめた。  青は恐る恐るユキに手を近づけてみる。ユキはグルグルと喉を鳴らし、甘える様に青の手に擦り寄る。青はユキを抱き上げてみた。ユキは嫌がる事無く青に体を預ける。 「青、目が覚めたのか? ユキも目覚めんだな」  黒は青の部屋に入るとユキを撫でる。  ユキもグルグル言いながら、黒にも懐いている様である。  それは少し面白くない。 「ママ! ユキに触らないで!」  バッと、ユキを黒から引き離す青。  僕に懐いてくれるまで五日も掛かったのに、ママには一瞬なんて許さないよユキ! 「まぁ、良いだろ? 同じヒョウ仲間なんだ。なぁ、ユキ」 「ニャーン」   「え!?」  ユキって猫だったの!? 犬だと思ってた。しかもママも猫なの!?  「お前を助けようと雨の中を飛び出したからユキも熱してな。暫く寝込んでいたんだ。まぁ、お前もなんだが」 「え? 本当? ユキ、ごめんね……」  なんだか余計な事をしてしまったようである。 「ニャーン」  ユキは『良いよ!』とでも言うように可愛く鳴いてみせた。 「ユキね、見つけた時、酷い衰弱していて、怪我もしていて、心配で……」 「なるほど、最近よく城を抜け出していたのはユキに会う為だったんだな」 「うん。ユキ、なかなか洞穴から出て来なくて……」  頑張れば自分も入れそうな大きさでは有ったが、無理矢理引っ張り出すなんて、とても出来ない。 「ちゃんと専門の医師にも見せて治療して貰ったからもう安心だぞ」 「本当?」 「ほら、ユキももうこんなに元気になったよな?」  黒の問いかけに「ニヤーン」と、ユキは可愛く鳴いて見せる。 「ユキはどうやら俺と同じ半獣の様でな」 「え?」  ユキが? ママと??  でも、どこも人間ぽさは無いが。 「人間と魔物の間に出来た子供は殆どがユキの様に知能を持たないただの獣になってしまうんだよ。本来は酷く攻撃的で野蛮な性格になるのだが、どうもこの子は違うらしい。しかし出来損ないの魔物は魔物からイジメられてしまうんだ。それでユキは境界線まで出てきてしまったんだろう。しかしユキヒョウは美しく毛皮も高く売れる為に人間からも襲われたのかも知れん。それであんな所に隠れていたのだと思う」  黒はそう説明すると、ユキを哀れんだ様な瞳でみつめるのだ。  そか、ユキ。確かに美人だ。 「ねぇ、ユキをここに置いても良いでしょ?」  危険な外になんて二度と出したくない。ユキには居場所が無いのだ。  だったらずっと此処に居れば良い。 「ああ、勿論だよ。ユキは青の命の恩人だしな。だが、ユキが森に帰りたそうにしていたら帰してあげるんだよ?」 「……うん」  ユキは森になんて帰りたがらないよね?  僕とずっと一緒にいてくれるよね?  青はユキを見つめつつ、優しく撫でた。  ユキは甘える様にゴロゴロと喉を鳴らす。  きっと大丈夫だ。ユキはずっと一緒に居てくれる。  僕の可愛いユキ。  ずっと一緒だよ。  青はユキを抱き上げるとソッと頬にキスをするのであった。

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