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第4話
「やだやだぁー!! ユキと離れたくない! ユキも連れてく〜〜」
「ユキは連れて行けないんだよ青」
ユキを抱きしめ、泣きわめく青に困り果てる黒。
何が有ったのかと言えば、今年から青は小学生、学校に行かなければいけないのだ。
この国では基本、小中高と一貫して寮生活が基本である。親離れを狙っての事だ。
全員そうであるのに、王の息子だけ特別などと言う訳には行かず、青も寮生活になるのだが、青はユキと離れたくない。
「ニヤーン、ニヤーン」
「ほら、ユキも一緒が良いって!」
「ユキはただ困ってるだけだ」
黒はユキと同じ豹なので、ある程度ユキの意思が解る。
「青、ずっと帰って来れない訳じなないんだ。長期休暇には帰って来れるんだから。な?」
「うう〜」
「パパだってママの側を離れて寮生活を頑張ったんだぞ。しかも12年間一切会えなかった」
「そうだぞ青。パパも頑張ったんだ。ママもパパに会いたかったけど、頑張ったんだぞ」
「え? それ本当? 黒も俺に会いたかったの?? 嬉しい!」
「おい、今はその話じゃない」
黒に抱きつく白、黒は呆れてしまう。
「ママはずっとパパを待ってた?」
「待ってたよ」
「浮気しなかった?」
「浮気なんてしなかった」
そもそも森の奥で一人ぼっちだった為、白以外に人と合うことも無かったのだが。
「ユキも待っててくれる? 浮気しない??」
「ニャーン?」
ユキは絶対に意味が解って無いという鳴き声である。
「ああ、ユキも解ったって。ずっと待ってるし、浮気しないって言ってる」
黒は『ごめんユキ』と思いつつ、ここは嘘も方便である。
「ユキ、約束だよ?」
そうユキを見つめる青に、何だか良く解らないであろうユキも、何かを悟ったのだろう。コクリと頷いた。
「パパ、ママ、帰ってきたら僕、ユキと結婚するから!」
「ユキと!? それは……」
「うん、解った!」
「おい、白……」
ユキと結婚なんて…… そもそもユキの意思が解らない。
しかし白は『ここは話に乗ってやるしかないでしょ!』と言う顔をしている。
黒も仕方なく頷くしかなかった。『ユキ、度々すまん』と心の中で謝るしかない。
「絶対、絶対だよ! ユキと絶対結婚するんだからね!!」
青のその言葉に、二人とも頷く。
「ユキ、絶対待っててね。僕、めちゃくちゃ良い男になって迎えに来るからね!」
そう誓いを立てる青。ユキはよく解らない顔で有るが、頷いた方が良い雰囲気を読取り、コクリと頷くのだった。
「これ、僕が作ったの」
そう言って、青はユキの腕に輪を通した。
それは簡単に作れるシルバーリングである。中心には、何処でも拾える少し青みがかった石がついていた。
「婚約指輪だと思ってね」
青はそう言うと、ユキをユキの部屋である籠の中に戻した。
「僕、学校行く!」
そうやっと決心を決めるのであった。
白と黒はホッとして笑顔になる。
二人はこの時、青が本気でユキと結婚しようと思っている等とはつゆにも思わなかった。
子供がペットの猫と結婚する等と言うのを誰か本気にするだろう。
白と黒はユキを青のペットだと思っていた。
青もきっと大人になれば、こんな話、子供の頃の可愛い笑い話しになるのだろうと二人はそう思って疑わなかったのである。
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