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第9話

 パーティが終わったのは深夜であった。青は酷く疲れ、ベッドに辿り着くとそのまま眠りについた。  結局イイ人等見つかる訳も無し、挨拶されるのを流れ作業の如く交わし、何とか乗り切った。  しかもここで突然イオの重大発表である。  「パーティは三日三晩執り行う予定ですので仮眠です」  だと。聞いてないぞ!  奴は僕を殺す気だ!! 『一日で決められないでしょ貴方』と、言っていたが…… 「三日有っても決められないと思うがな……」  青は思わず寝言を呟いてしまうのである。  フと、部屋に誰かが入って来た気配を感じ、青は目を開けた。  イオがもう起こしに来ただろうか。 「悪いがもう少し寝かせてくれ」  そこで気づく、イオなら必ずノックをするはず。パーティに騒がしい城内、暗殺するなら絶好の好機と言う訳か!  青は飛び起き、咄嗟に短刀を抜いた。 「は、あ、うう……」 「お前、庭師……」  焦った様子の男は昨日挨拶を済ませたばかりである庭師であった。  青は溜息混じりに剣を鞘におさめる。 「勝手に入るな。ノックしろ」   普通、城主の部屋にノック無しで入るか? いや、そもそも他人の部屋にノック無しで入るとはどう言う躾を受けてるだこの駄豹め。 「す、み、まセン、寝てタ。起こすの申し訳ないとオモタ」 「そうか。解った」  寝てると思って起こしたく無かった様である。悪気は無いんだな。うん。天然だ。 「ジョン。君は僕を気づかってくれたのだろうが、挨拶をしなかったり、部屋にノック無しで入ったりするのは良くないぞ。僕は挨拶してくれなければ寂しいし、今なんて暗殺者かと思って君に襲いかかる所だった。本当にビックリした」 「ゴメンナサイ……」  ジョンはシュンと項垂れる。 「何か有ったら必ず僕に声を掛けるようにしろ。良いな。寝てるとか忙しそうとか関係ないく声を掛けろ」 「ワカッタ!」 「解ってくれたか。ヨシヨシ」  ジョンは青の言葉にコクリと頷くいた。青は立ち上がり、気付くとジョンの喉をナデナデしていた。  ジョンはクルクル喉を鳴らす。 「は! 主、ヤメテ! 私、ネコ違うデス!」 「いや、猫だな。猫じゃらしでも持ってこさせよう」  図体デカイくせに子猫の様な可愛さに見えてきた。 「猫じゃらしじゃチイサイです!」 「大きさの問題?」  青は思わず笑ってしまう。ジョンはムスッとした顔で青を見てしまう。 「私、花モッテ来ました」 「ああ」  どうやらジョンは花をいけに来た様だ。 「ケサ咲いたばかりのアネモネ」 「綺麗だ」  その白いアネモネを見つめる。 「主は白がオスキなヨウですカラ」 「何でそう思う?」 「愛馬白い、お父さんのナマエも白」 「初恋の子も白かったな」    青はフフっと悲しげに笑ってみせた。初恋の子は今でも愛している子だ。 「シツムシツにもアネモネ飾りました。青にしました。主の瞳のイロ」 「ああ、有難う。初恋の子も青い瞳でね。僕は多分、その瞳に一目惚れしたんだ。あの子は僕の青とは違う、サファイアの様な瞳でね…… 会いたいな」  白いアネモネと、ジョンを見ていたら無性にユキを思い出し、会いたくて堪らなくなってしまう。 「主、ネムイ。まだネタ方、良いデス」  ジョンはヒョイっと青を持ち上げベッドに寝かせると、布団を掛ける。 「あ、いや…… 目は覚めてしまった。これから朝の散歩にでも誘おうと思っていたんだが……」 「私、オコシタから…… ゴメンナサイ……」  ジョンはまたシュンと落ち込んでしまう。 「いや、良いよ。ジョンと話てると楽しい」 「私、コトバ、上手くシャベレナイ……」 「聞き取れるから問題ないさ」 「デモ、私、コレから野菜モッテいかないと。だからネテ」 「そうか。庭には父上の家庭菜園もあったな。あれも君が引き継いだんだな」 「ハタケシゴト好き」 「僕も久しぶりに畑仕事しよう! 昔は父上と良くやったものだ」 「いい。主、疲れてる。ネテ」  寝かしつけようとしているのに、青は元気に飛び起きてしまい、ジョンは困ってしまう。 「良いじゃないか。僕もストレス発散になるから、な? 手伝わせてくれ」 「主にサセラレナイ」 「手伝わせろ。命令だ」 「うう……」  命令だと凄む青に、ジョンも命令ならば断れない。 「解りマシタ」 「よし! じゃあ畑に行こう!」 「うう、イーくんに絶対にオコラレルよ〜〜」  ジョンはとうとう頭を抱えてしまった。 「そしたら俺がイーくん怒っておくから安心しろ」  青は適当に汚れても良い服に着替えつつ、ジョンに笑いかけるのだった。  イーくんはイオの事だろう。 「イオと仲良さそうだけど、昔からの知り合いなのか?」  何だか気になる。 「イーくん。オサナナジミ」 「へーー」  もしかして、ここに務めているのもイオからの伝なのだろうか。  仲良さそで羨ましい……  羨ましい?  なんで羨ましいなんて思うのだろう??   自分の気持ちが不思議でしかない青。  取り敢えず 「僕もユーって呼んで良いか?」  イオはユーくんと呼んでいた。イオが呼んで良いなら僕も良いはずだ。  いや、自分の家臣を何と呼ぼうと僕の勝手である。 「え? ナンデ??」 「昨日、イオがそう呼んてたから。名字なんだってな」 「えっと…… ハイ、そう、えっと……」 「名字が有るのって珍しいよな。ユータイガーだっけ? タイガーはどっから来たの?」 「えっと…… 私もワカラナイ」 「そうか。歴史の有る家の出か?」 「ウーー……」    ジョン、もと言、ユキは困り果ててしまう。イオはどうやら苦し紛れに変な言い訳をしたらしい。自分もその設定は解らない。  後でイオと設定を擦り寄せ合わなければならである。  「まぁ、いっか。ほら行こうユー。朝食に間に合わなくなるぞ」 「チョウショクじゃない。チュウショク用」  朝食用はもう持って行った。

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