10 / 15
第10話
「こんなものかな?」
「十分だと思います」
二人で畑の野菜の収穫をし、馬の背中に乗せる。トマトやらキュウリやら、キャベツ、それに人参、大根が沢山取れた。馬は勝手に次々と運んでくれる。
「そう言えばユー。ちゃんと言葉喋れるんじゃないか」
一緒に作業している内に、いつの間にか
ユーの言葉遣いに違和感はなくなっていた。
「あ、本当ですね。私、緊張すると上手く喋れないですけど、主に馴れたみたいです」
「そうか。良かった良かった」
青は馴れたと言われると嬉しくなり、ユーの喉をまたナデナデしてしまう。
「や、やめて下さい。猫じゃないですってば!」
ユーは喉をゴロゴロ言わせながら恥ずかしそうに顔を反らす。
なんか可愛いな。
「あ!! やっぱり!! 王!!!」
イキナリ叫び声が聞こえ、青はソチらに目線を移す。
イオだ……
「探しましたよ全く。パティーは続いていると言っておいたのに…… それに黙って部屋を空けられたら心配するじゃないですか! 何か有ったのかと思いましたよ。魔物に攫われたとか……」
「自分の身ぐらい自分で守れるさ」
「貴方、目見は良いんですから!」
「おい、聞き捨てならないぞ。中身はクソだとでも言いたいのか!」
「そうでは無いです……」
正直に言えば、青は見目とのギャップが有るので、イオは思わず口を滑らせてしまった。
「二人ともケンカはヤメテ!」
慌てたユーも、また言葉遣いがおかしくなってしまう。
「ユー、王に連れ出してくれと言われたのかも知れないけど、勝手に連れ出すのは止めてくれ! 側近である俺に一言入れてくれないと困る。そもそも今日はパティーだとお前も知っていただろ?」
「シッテタ。ゴメンナサイ……」
「おい、ユーに怒るなよ!」
怒りの矛先をユーに変えたイオに、申し訳なさそうに謝るユー、それを庇う青。
「ユーって何ですか? コイツの名前はジョンですよ」
「知ってるさ。ただ俺は呼びたい名前で呼んだだけだ。俺の家臣を俺が何と呼ぼうと俺の勝手だろ!」
「貴方はユーではなく、ユキと呼びたいのでは? 彼をユキの変わりにしようとしているだけてしょ?」
「何だと!!」
急に険悪になり、イオと青は睨み合ったと思うと、青はイオの胸元に掴みかかった。
「図星ですか?」
「イオ、お前。主に向かってその態度か」
二人は低く声を出し、目線と目線の間にはバチバチと閃光が見える様であった。
「ヤメテ、二人とも! ドウシタ! ナゼ喧嘩するデスか!!」
ユーは更に混乱する。何故、二人がこんな風になってしまっているかは解らないが、原因は間違いなく自分の様だ。
ユーは二人の肩を掴み、何とか引き離そうと試みるが、獣としての力はあるものの、二人の力が異様であり、ユーでは太刀打ちできない。
「イオ、お前を破門にする」
「私を破門にしてどうするのですか? 替わりにユーを側近にすると?」
「まさか。妻にする」
「「は?」」
青の突然過ぎる宣言に、イオとユーは間抜けな声を出してしまった。
「主、私、アノ……」
「王、ユーは既婚者なので……」
「そう! 私、キコンシャ!」
困惑するユーに、咄嗟に助け舟を出すイオ。ユーもそれに乗っかる。
「結婚…… してたのか?」
「スミマセン……」
「そうか……」
青は放心状態になってしまう。
僕、何をムキになって変な事を……
「悪い、どうかしてた。イオも、悪かった。破門は撤回する。俺の側近はお前しか居ない」
イオは大事な側近であり、自分の良き理解者、親友でも有るのだ。それを…… なんて酷い事を言ってしまったのだろうかと、青を自責の念が襲う。
「いえ、王、私もどうかしていました。その、王が部屋に居なくてビックリして…… 本当に心配だったので……」
イオも落ち着きを取り戻し、謝罪した。本当に、自分は王を相手に何て事を口走ってしまったのか。そうイオにも自責の念が襲った。
二人は握手で和解する。
お互い何をこんなにもムキになってしまったのか……
「フタリともナカナオリ。ヨカッタ」
ユーもホッとして二人に笑いかける。
「ユーも、悪かった。八つ当たりだ」
「イーくん悪くない」
「あぁ、有難う」
イオとユーも握手し、ハグして仲直りである。
「王、取り敢えずパーティです。すぐに戻ってお風呂、朝食を10分で済ませて下さい」
「おい、10分は鬼畜過ぎるだろ」
「勝手な行動をした王が悪いので」
腕組みし、説教モードのイオに青は舌打ちである。
「主、馬、ノッて」
気を利かせたユーは青を馬に乗せる。馬は直ぐに走り出し、ユーを城内入口まで運ぶのである。イオはライオンなので自分で走った方が早いと、そのまま青の後に続くのであった。
ともだちにシェアしよう!