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第11話
パーティの二日目を中座し、寝室に向かう青はもはや疲れ切っていた。
これが明日も続いていると思うと胸焼けがしそうである。
青が寝室に入るとブルーのアネモネが目に入った。そう言えば、ユーが生けたと言っていたな。
そんな事を考え、青は窓際のそのアネモネを眺めた。
少し疲れが癒える気がする。
疲れて今すぐ寝たいのに、何となくユーに会いたくなり、青はこっそりと寝室を抜け出すのだった。
「ユー」
「主?」
馬小屋に灯りを見つけ近付く。ユーは丁度馬の世話を終わらせた所であった。
「どうしました?」
「その…… 眠れなくてな」
全然眠れるだが、お前に会いたくてなんて言うのはどうなのかと思ったのだ。
「ハーブティーを淹れましょうか?」
ユーは優しく言って首を傾ける。
「そうだな。頼む」
「では、持っていきますね」
「お前の部屋で良い」
「私の部屋ですか? 狭いし、あまり綺麗では有りませんよ?」
「構わない」
ユーは落ち着いている様で、言葉遣いは上手だ。
青は馬小屋を出るユーの後に着いて行く。
資材置き場である、倉庫の奥にユーの部屋は有った。
「むさ苦しい部屋ですけど……」
ユーは青を部屋に招き入れる。
どうやら少し直しを入れた様で、6畳程の部屋にはベッドと机、それから食台とキッチンが有る。
ソファー等無いので、ユーは青はをベッドに座らせると、キッチンでハーブティーを作り、青に差し出すのだった。
青はソレを口に含んで一息つく。
美味しい。
「これも君が?」
「ええ、人参を育てるのに一緒にハーブを育てると虫が寄らないんです」
「なるほど」
そんな会話をし、ユーもハーブティーを飲む。
「君の嫁さんの話をしてくれないか? どんな人なんだ。君が家に帰らないと寂しいんじゃないか?」
何故こんな事を聞いてしまうのか。青は何故か気になった。
「妻は素敵な人です。優しくて、私を助けたくれた…… いえ、寂しがってくれているでしょうか」
「いるさ。城に部屋を取ろう。君の妻を連れてきても構わないんだぞ? 家族で家に支えてる使用人も何人かいる。君の妻は家事が出来るだろ?」
「あー、いえ…… その……」
哀れんだ様子の青に、困ってしまうユー。だって、本当は妻なんて居ない。
今言ったのは青の事である。何故妻の事を聞かれ、青の事を答えてしまったかと言えば、無意識である。
「どうした? 何か困る事でも?」
「えっとその…… 妻は……」
居ないんです。妻なんて……
「死別してるんですよ。ただユーは前妻に生涯を誓っているんです。な?」
突然の助け舟にビックリするユー。
「イオ」
青も声の方を見た。イオである。
「王、寝室を抜け出すなら私に言って下い。全くもう、いい加減になさらないならマーキングしますよ」
「オェッ、よせよ気持ち悪い」
魔物のするマーキングとは体の一部を舐める行為だ。気持ち悪すぎる。
「でしたら自重してください。次はないですよ」
イオは溜息混じりに青の手を引く。
「主、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。朝もハーブティを入れて欲しい」
「解りました持っていきます」
フフっと笑顔で手を振るユーに、青も手を振るのだった。
そして馬に乗せられ城に連れて行かれるのであった。
ああ、僕、やっぱりユーが好きみたいだ。
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