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第13話
焦って飛び出してしまったイオは水を頭から被り、念の為にΩの発情に鈍感になる薬を呑み込む。Ωが抑制剤を飲むのと同じで、αにも抑制薬が有るのだ。
親友がΩである為、念の為にと持たされていた物である。しかしユキは自衛をしっかりし、発情期が近くなれば来る前から抑制薬を口にしていたので、イオが抑制薬を口にしたのはこれが初めてである。
恐らく、周期を大きく外しての発情だったのだろう。
イオがユキに会いに来たのは青との事を話したかったからである。
婚活パーティも3日目、今日で終わりだというのに青は全く気にいる女性もΩも居ないのだ。イオは名家のご令嬢から、国一番の美女まで。Ωの可愛い子からイケメンまで、手当たりしだいに全てを用意した。勿論、青は王であり、名家のご令嬢や隣国の姫等と結婚して頂いた方が政治的にも有利だと思われるが、イオは青に幸せになって欲しい、していては世継ぎを産んで貰いたいだけなのである。青は一人っ子である為に、青が産ませなければ血が絶えてしまう恐れがある。イオはそれだけは避けなければならないと危惧していたのである。
まぁ、あれだけ今でもイチャラブしている前王と妃を見れば、第二子も時間の問題で有るような気はするが、男児が産まれると言う保証は無いのだ。
それに前王の口癖は『子供は青だけで十分。子育てで黒が手一杯になってしまうと妬いちゃうからね』である。
イオは兎に角、世継ぎと青の幸せを考え、ユキと話し合いたかったのだ。
それなのに……
発情していた親友に興奮してしまい、寝込みを襲ってしまうなんて。
自分はなんて最低なんだ。
イオは頭を押さえて項垂れる。
青もユキもイオにとっては大事な幼馴染であり、親友である。二人には幸せをになって欲しいのだ。
イオはユキが青の求婚を嫌がり、姿を消した事を知っていた。
でもユキは青が好きで、こうして姿まで変えて庭師になったのだ。
恋愛感情ではなく、親愛であり、イオと同じ感情だと親友は言う。
でも、ユキの必死な努力と青への態度を見ていると、ユキも青が好きなのではないだろうかとイオは思ってしまうのだ。
青もどうやら別人を装ってるユキにも惹かれている様に見える。
その真意をユキに今一度問い掛けようと思ったのであるが……
薬を飲み、落ち着いて来ると、部屋の二人が心配になってくる。
王はΩに当てられた事は無いが……
『俺のΩ』と、言っていた気がする。まさか……
イオは井戸の水を水筒に詰めて走り出していた。
ユキの部屋まで戻ってきた。ドアは青により蹴破られているので開ける必要は無い。
「王!!」
部屋に駆け込めば、青はやはりユキを押し倒し、獲物を捕まえた様な目で舌なめずりをしている。
マズイ、あてられている!
青がΩの発情に当てられる等初めての事でイオもどうしたら良いのか解らない。
取り敢えず引き離そうと青の腰を後ろから掴み、力任せに引く。しかし、イオより青の方が力も有り、引き離せない。
「ユキ……」
そう青が囁く。
バレたのか、それともユキに見えるのか。
「主……」
ユキもうっとりとし、青を見ていた。ユキも青のαに屈服したのだろう。
こうなればこのままほっといてしまっても良いのかも知れないが、ユキは青にその気は無いと言い張っているし、まだ真意をキチンと確かめてない。
こんなまま二人が結ばれた所で幸せになれるとは思えなった。
イオは必死に青の腰を引っ張り続けた。
青はそんな事を気にしない様子でユーにキスしてる。
ああ、もう、どうしたら良いんだ。
「パパ〜 助けて〜〜」
イオはもう八方塞がりになり、どうしようもなく泣き声混じりで父に助けを求める声を上げてしまうのだった。
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