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エリック・クィン

縫合は、ショーンの手によってものの5分ほどで終了した。 局部麻酔をしない状態での処置だったため、ジェフはあまりの激痛に悶絶し、全身から冷や汗が滝のように流れていた。ポールは傍らでそれを拭ったり、のたうちまわろうとする彼の巨躯を押さえつけていた。非常に体力を使う役目だったので、終わる頃にはポールもまた汗だくだった。 縫合した患部にガーゼをあて、その上から包帯を巻いた後、ぐったりとするジェフを夫婦でゲストルームまで連れて行き、ベッドに寝かせた。彼はすぐに気を失ったかのように眠り始めた。苦しげに眉を寄せたままだったが、それでもいくらか硬さがとれた表情だった。 ショーンとふたりでリビングへ行けば、エリックはソファーに座り、ぼうっと虚空を眺めていた。その整った横顔は疲弊の色で濃く覆われていたものの、落ち着きを取り戻したのか、背筋はすっと伸びており、悠然と長い脚を組み、その上に両手を重ねていた。 ポールたちの足音に気づき、ゆらりと目顔をこちらに向けてくる。 ショーンが穏和に微笑み、ポールもそれに合わせた。 「……ジェフは?」 「ぐっすり、眠ってる」 エリックは微苦笑を漏らした。 「ふたりには、随分と迷惑をかけてしまった」 ローテーブルを挟んで向かいに置かれたソファーに、ショーンと並んで腰をおろしたところで、心咎めを多分に含んだ声で彼は言った。 「今夜の件については、後々君たちに責任が問われないよう手を回しておくから、何も心配いらない。……すまなかった」 「謝ることはないよ」 ショーンは凪いだ表情だった。「俺たちを信じて、頼ってくれて、ありがとう」 「……貴方は、あまりにも人が好い」 エリックは口角をあげ、ポールに視線をやった。 思わず、苦笑いになる。それはショーンの長所でもあり、短所でもある。人が好く優しいが故に、人一倍、傷つく。その度にショーンは酒に逃げ、一時期は精神安定剤や睡眠導入剤の世話になっていた。 取り繕うことばかりが上手くなり、呻吟する心との接し方を見失って生きてきたショーンに、曝け出す勇気と居場所を与えたのが、ポールだった。 ショーンの心の拠り所として、彼の弱さと向き合い、それごと抱擁してきた。 彼を愛し、彼に愛されている自分だからこそ、できることだった。 エリックの目配せにはショーンへの敬意だけでなく、ポールに対する激励も含まれているように感じた。ショーンを支えられるのは君だけだ。そう言われているようだった。 もちろんだ。ポールも眼差しで、そう返した。 エリックはやっと、マグカップのミネラルウォーターに口をつけ、それを一気に飲み干した。喉が渇くのも、無理はない。それから、ふっ、と短く息を吐くと、脚を組み直し、シャーロック・ホームズよろしく、指先が触れ合った両手を口元に添えた。 「《5》の俺に対する監視について、聞きたいか?」 「……僕は、何となく察してる」 ポールはちらりとショーンを見た。聞きたいか否かについては、彼次第だった。 「話せるのなら」 ショーンは表情をそのままに、そう答えた。エリックは目を伏せ、そして、淡々とした口調で言った。 「俺には、スパイ容疑がかけられている。妻……、ジャネットが過激派組織の協力者だったからだ」

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