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第2話
「さくらとけっこんする。」
一目ぼれした日に心に決め、守って見せるとメラメラと燃えていたあの日。
・・・まぁ、父の再婚がきっかけで幼き頃の希望はいとも容易く打ち砕かれたわけで。
桜と未桜(みお)が正式に家族になって、結婚することができなくなったからだ。
桜は既に結婚していて家を出ており子供もいる。
俺は中学に上がった頃、引きこもりになり塞ぎこんですっかり心を閉じ、ドアノブは錆び付いて誰も握りたくなんてなかっただろう。
未桜とは兄弟にあたる関係になったが年齢は向こうが上で学校が被る事なんてことはなく、父親にせめて高校だけはと泣き付かれたが、行ってもどうせ中退になるし金の無駄だと思い、高卒認定試験を受け合格して居場所を守っていた。
大学が行かずにそのまま父の生業を継ぐような真似ごとをして作家になった。本を出すと言うより今は取材して記事を書くなんてこともしている。
片柳という苗字は非常に便利で有名作家の息子というだけで仕事が舞い込んで来る。
因みに頭が良く真面目な未桜は薬剤師になり、近所の薬局に勤務している。
こうやって夜更かしをして昼も寝ている俺を昼休みを潰して起こしにくるくらいは心配性だ。
腹いっぱい食うと仕事に差し支えるからといつも軽い物を作ってくれる未桜。
おかしな事と言えば付け合わせにサンドイッチにピクルスとかじゃなくてお新香とかがちょいちょいついてくる。
好物の手作りタマゴサンドをぱくつきながら資料に目を通す。なのだが。
「うま・・・。」
ふふ、と笑みがこぼれる。トーストされ少し香ばしいのにふかふかのパンに挟まれた優しい味の卵ペーストが絶品だった。
美味しいもの食べると、幸せだなぁ。って薬剤師だからなんか薬でも・・・?そんなわけ・・・。
「今日の取材は・・・っと。夜の仕事のかたかぁ」
デリケートな部分だからなと独り言を呟く。
昼間だったので取材先の女性を捕まえる事ができ、ボイスチャットで取材は行われた。
その後はまどろみ、記事を書きあげ、また仮眠を取っていた。
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