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第19話
「ご主人様の気持ちが重すぎると、相手も嫌になっちゃうよ」
「重いってなんだよ」
気を遣う事が重いのか。それとも本音をいうのが重いのか。
自問自答する。
ぐるぐる思考を巡らせると、また頭が痛くなってくる。
昨日の夕方にマルと会ってから、考える事が増えてキャパオーバーだ。
部屋着に着替えて歯磨きを終えた七緒は早々にベッドに潜り込んだ。
「もうダメだ。今日は寝る」
「わかった。じゃあ俺も寝よ」
「ちょっと待て」
なぜか同じベッドに潜り込み、ピタリとこちらにくっついてくるマルの身体を押した。
「お前は床で寝ろ」
「えっなんでっ?」
「昨日も言ったけど、大の大人が二人シングルベッドに寝たら狭いだろっ」
「でもなんだかんだで一緒に寝てくれたじゃん」
「いや、それはそうなんだけど、耳が……」
抱きつくマルのフサフサの耳が、頬を時々掠めてくすぐったくて肌が粟立つ。
ベッドの端に移動しても、マルは磁石のようにまたくっついてくる。
「彼氏に悪いとか思ってる?大丈夫だよ。だって俺はご主人様の飼い犬でしょ?」
「こんな時ばっかり犬面して……あっ」
マルの長い尻尾が片足に巻き付いて、すす、と怪しく布の上から撫でられたから声を上げてしまった。それを聞いたマルは含みのある笑みを浮かべる。
「あれ、ご主人様どうしたの?くすぐったい?」
「ちょっ、あ、やめ……」
「ふふふ。これは?」
「あっ、ほ、本当に、やめ……っ」
「んー、顔赤いよ?これはどう――」
――ゴツン!
尻尾の先端が七緒の体の中心を撫でようとした瞬間、頭と頭がぶつかり合う音が部屋に響いた。
マルは悶絶しながらおでこを手で押さえる。
「痛い!酷いよ、頭突きするなんて!」
「エロ犬!寝ろ!今すぐ!分かったか!」
うぅーと涙目のマルに背を向けた七緒は、枕を抱え込み眠りについた。
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