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第32話

「なんでそこでちゃんと訊かないの?嘘吐かれてるの分かってるのに」 ストレスMAXの七緒は、恒例行事の爆食いパーティーを部屋で繰り広げている。 マルはたまにあるこの行事が大好きだ。 甘いものをたらふく食べられる。 菓子をどんどん口に放り込むマルに対し、七緒は今日は控えめに一粒のチョコをかじるだけだった。 「なんか……自信満々に言われたから、俺が間違ってるのかなと思っちゃって」 「でもその目でちゃんとゴミ箱に捨てられてるのを見たんでしょ?」 「そうだけど、もしかしたらたまたま誰かの捨てた白い箱をそれだって勘違いしたのかもしれないし」 「あー!出たよ!ご主人様の言い訳!」 盛大に吹き出された七緒は反論する。 「言い訳じゃないよ。そういう事だって可能性としてあるだろって話」 「傷つきたくないって思うとそうやってすぐに自分の都合いいように変換するんだから。昔からそうだよ」 「……」 「ご主人様はあいつの都合のいいように使われてるんだよ。あいつの思い通りに動いて、何か疑問に思っても訊かないし文句も言わない。ご主人様がそんなだから、あいつもご主人様をそういう扱いするんだよ」 七緒はマルから視線を外す。 言い返そうとしたけど、マルの言葉が的確すぎて、ぐうの音も出なかった。 こちらが何も言わないから、相手はそれでいいと解釈する。 本当は自分一人と付き合って欲しい、エッチな事も本当は自分だってして欲しい、すぐに不機嫌になる癖を辞めて欲しい。そう思ってはいるのに伝えないから、彼はずっと七緒に同じような態度で接するのだろう。 嫌な事があっても、本音を隠してニコニコして生きていれば、人間関係なんてスムーズにうまく行くって思ってた。 でもそれは違った。うまく行くのは表面だけで、心はとても正直で、こうやって自分を苦しめている。 七緒は本当は、心からの本音を言い合える人と恋人同士になりたいのだ。 犬の耳をピクピクさせるこの男にだけ本音を言える七緒は、上手く行かないこの状況に嫌気が差し、その思いをぶちまけた。

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