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第48話
「アンアンアンアンアンッ!!」
「あら、見てこの子。すごく吠えてる。怒ってるのかしら?」
品の良さそうなマダムに向かって挨拶をしたけど、失敗。
俺の目の前を通り過ぎ、向こうの猫のコーナーに行ってしまった。
「クゥーン……クゥーン……」
「きゃあぁ、可愛いこのわんちゃん!私、この子欲しい!」
今度は小学校低学年くらいの女の子が俺をじっと見てきたから、ここぞとばかりに瞳を潤ませ、身を捩らせながら甘えた声を出す。すると案の定食いついてきてくれた。
よし!俺の事を気に入ってくれたみたいだ!
しかしその隣にいた父親らしき男は、腕組みをしながら俺を渋い顔で見てくる。
「シェルティーかぁ。すぐに大きくなるしなぁ……お、こっちのチワワはどうだ? 黒くて目がクリクリで可愛いぞ?」
「わぁー可愛い!抱っこしてみたい!」
そのまま二人は、奥の方へ消えて行った。
……ふんっ、なんだよ!将来おっきくなるってのがそんなに悪いのかっ?
プンスカと怒る。
その後も頑張ってアピールはしてみた。
その成果もあって、俺を抱っこしてみたいと言い出す人間が日に日に増えて行った。
頭を撫でてくれると気持ちよくて嬉しい。
けど誰も、外に連れて行ってあげるよと言ってくれなかった。
焦っていた。
チワワくんは結局、あの時の女の子じゃない人間に抱っこされて帰って来なくなったし。
世界に俺だけが取り残されている気がした。
どうしよう…どうしよう…
誰か、お願いだから俺をここから出してくれ〜!
何もかも投げ出したくなった俺は目を瞑りながら、前足でカリカリとガラスを擦った。
その動作もしばらくすると飽きてきて、ふぅ、とため息を吐いて顔を上げた時、男の人と目が合った。
男の人は、俺の事をじっと見てくる。
笑いもせずに、無表情。
切れ長な目だからか、どことなく冷たい印象を受けた。
尻尾をフリフリしてみても、うんともすんとも反応が無い。
そいつの意図が分からなくて、少々落ち着かない気分になる。
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