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第3話 -11

 潤滑剤を掌で温め、そっと触れてくるそれに下腹部が震える。慣れない感触におかしな声が漏れた。  こんなこと父にはされたことがない。あの男は自分本位に、悟志のことを性玩具だとしか思っていなかった。自分が腰を振るのに滑りが悪いからと使われるそれはいつも酷く冷たく、優しく手で触れるなんてされたことがなかった。  足の間に手が這うものの、肝心のそこには触れない。根元の膨らみの奥、少しだけ柔らかいそこを指の腹で抉るように撫でられ、腰が跳ねた。 「や、だ、そこ、や」 「気持ちいいだろ?」 「嫌、やだ、早く」  性急に触れられないことが、堪らなく怖く感じてしまう。早く触れて終わらせてほしい。こんなにもゆっくりと、撫でるように触れられたことなんてただの一度もなかった。だからこそ、早くしてほしいと願う。  そんなこと、時雨が知る由もない。悟志の懇願に彷徨わせていた指を漸くつぷりと後ろの秘めた場所へと埋め込む。親指の腹で先程の場所を絶えず刺激しながら、初めに挿入した中指はこれまたゆっくりと中を確かめるように侵入してきた。  唇を塞がれ、それでも慣れない感触と快感に漏れ出る嬌声。こんなの、自分の知っているセックスじゃない。それでも、気持ち良くて堪らない。泣いてしまいそうだ。  ある一点を刺激され、甘い電流が走った。コリコリと何か硬いものに触れられ、その度に腰が跳ね声が漏れる。  嫌だ。反射的に足を閉じ、悟志は時雨に縋る。こんなこと続けられたら、頭がおかしくなってしまう。それを宥めるように、時雨は頬にくちづけた。 「こんな状態じゃまだ挿れられないだろ。まだ慣らしてるだけ」 「今の、触るの嫌だ」 「なんで? ここ気持ちいいじゃん?」 「そんなとこ、触られたことない。慣らすのだって、指で拡げて挿れれば入るだろ」  辿々しくも呟くように言うそれに、悟志がこれまでどんな抱き方をされてきたのかを知る。自分だって脅迫するようにして今こうして触れているのだが、そんな愛し方は普通じゃないと教えるためにまた優しくキスをした。 「大丈夫、気持ちいいだけだから。痛くしたくないからさ、もうちょっとゆっくり解させて」  足を撫で、穏やかに話しかける。痛くないのは好きだ。時雨の言葉にそんなことができるのは混乱しながらも、悟志はそれを受け入れた。

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