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第19話 -9
いつだったか、家電を買ったのとは別の店にやってきた。
車椅子だからか少し目立ってしまっているが敵意の視線以外は無視。悟志を連れまわし、ベッドや勉強机を次々見て決めていく。
「別に机はいらない」
「学校のもの収納するものも勉強する場所も必要でしょう、駄目です」
「……なお」
「俺に助け求められても……」
スーツ姿で小指のない男に車椅子を押され、明らかに堅気ではないチンピラとも会話している様子から、周囲には人が近付いてこない。悟志は澤谷を揶揄うためか、ずっとべったりだった。
「勉強する意味ももうないだろ、したくない」
「学生なんだから駄目ですよ。大学にも行ってもらわないと」
「逃げ道だっただけだからもう嫌だ」
「今の時代、大卒の方が有利なので勉強は続けてください」
「嫌だ」
「高卒でいいんですか。俺とも澤谷とも再来年にはお別れしてご実家戻ることになりますよ」
「……なお」
「だから俺に助け求めないでください。俺は悟志さんとあと6年くらいは一緒にいたいな?」
しゃがみ込み、勉強自体したくないとごねる悟志に笑いかける。悟志はじっとそれを見た後、市倉を見上げた。
「犬がこう言ってるからする」
「こら、犬じゃないでしょう」
「別にいいっすよ。俺は悟志さんの犬です」
他の客もいるからと、声は出さずにわんと鳴く。
悟志は面白い玩具を手に入れたと思い込んでいるが、大人2人の考え通りに転ばされていることにはまだ気付いていない。市倉はこのまま気付いてくれるなと澤谷を利用しつつ悟志が長く組から離れていられるように、言質をとりながら購入する家具を決めていった。
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