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第19話 -13

 本棚と箪笥は一人で組み立てた。澤谷が帰ってきてからは机を運び、ベッドを二人で。大分学生らしい部屋になってきたとマットレスと布団を持ち込みベッドメイクをしてから眺め思う。  悟志を連れて来るか。自身の部屋に入ると、悟志は一度起きたのか市倉のスーツを被って寝ていた。  それだけで、堪らない気持ちになる。だが今は澤谷もいるのだから我慢とスーツを取り上げ、起こさないようにその体を持ち上げて部屋へと運んだ。  ベッドの上に寝かせてから悟志を揺り起こす。自分の後ろでは澤谷が教材を勉強机の本棚に並べていた。 「坊ちゃん、起きてください。家具大体取り付け終わりました。確認したらお風呂入ってご飯食べましょう」 「んん……」 「嫌じゃなくて。起きなきゃご飯ありませんよ」 「んー……」  まだ気分ではないのか、唸りながら嫌がる。  嫌なら起こさない。市倉はすぐに起こすのをやめ、澤谷に物を並べていくのを任せて部屋を出る。冷めても問題のなさそうなものを注文し、風呂を沸かしに行った。  半覚醒状態の悟志を置いていかれて困ってしまったのは澤谷の方だ。教科書は棚に詰め終わり、金庫は引き出しに、他の大事そうなものは箪笥の上に飾っていく。その間も悟志は半分だけ起きているような状態で体を起こし、ウトウトと船を漕いでいた。 「悟志さん、起きてー」  大体のものは段ボールから出したため、悟志を起こしにかかる。もう起きていると愚図っているそれを抱き起こせば、悟志はぎゅうと抱きついてきた。 「それはマジで駄目です、ねえ待って」 「ねる」 「今兄貴が風呂沸かしてるんで、入ってから寝ましょ?ね?」 「……市倉の味方か」 「そうです。ほんとやめて、今すぐ離して」  甘えても効かないと悟ったのか、悟志は抱きつくのをやめその場に座る。重たい瞼を持ち上げ部屋の中を見渡し、いいんじゃないかと零した。 「俺は寝る場所さえあればいいから」 「駄目ですよ。ちゃんと自分が暮らしやすいようにするのが一番です」 「お前が抱き枕になれば完璧だ」 「そういうのは駄目」  何を言ってもかわされるのが気に入らないらしい。  悟志は、あからさまに拗ねた表情を浮かべた。

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