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第20話 -6
光からは見えないよう座ったまま、スマートフォンを取り出し悟志へとメッセージを送る。
『なんで光には言わないで俺にだけ教えたの?』
返事がすぐ来た試しはない。一度目を外し、漸く光に声をかけた。
「光の方からは連絡してないわけ?」
「できるわけないじゃん、あんなに怒ったのに」
「あっちも怒られたから連絡しづらいって思ってるかもよ」
敵に塩を送りたいわけではないが、悟志が何故自分だけに送ったのか理由を知りたい。
でも、だけどと言い澱む光から画面に視線を落とすと、悟志からの返事が3件。
『俺のことを嫌いになったかもしれない』
『かなり怒っていて』
『あいつがいなかったらお前しかいないから』
だから、自分に。珍しい連投を見ていると、どうにも堪らなくなる。
俺しかいない。時雨は噛み締めるように脳内で反芻した。悟志には今、自分しかいない。それを慣れていない連投で教えてくれた。
『九条、どうしよう』
連絡できる人間が自分だけ、という捉え方が正しいのはわかっている。優も冬馬も宵も、悟志はあまり話したことのない人間。グループで会話できるようにはしているものの、話したことのない相手に連絡はしたがらない。悟志がそういうタイプだとはわかりきっている。
それでも。
『嬉しすぎて死んじゃうかも』
好きな人からの殺し文句は、超特大の爆弾のよう。
このまま、光が言い澱んで悩んで送らずに月曜を迎えればいいのに。そうすれば、連絡をしたのは本当に自分だけで、悟志の中で自分の存在が特別大きなものになったと思える。
『お前馬鹿だろ』
確認するように送られてきたそれにも笑みがこぼれそうになり、奥歯を噛んで表情を変えずに耐えた。
『馬鹿だよ。馬鹿になっちゃうくらい九条のこと好き』
こうなったら、もっと意識してもらえるように仕掛けるだけだ。
罪悪感も気まずさもあるけれど、どうせ光と仲直りしたら自分の順位は下がってしまうから。
『好きな人に俺だけなんて言われて舞い上がらない奴なんていないでしょ』
傷つけられたから、触れたいなんてことは言わない。
嫌われているかもしれないという可能性もまだ拭いきることはできない。
でもだからこそ、今は好きだという言葉を真っ直ぐに伝えておきたかった。
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