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第20話 -16

 箸が止まってしまった様子の悟志に、古谷は用件はそれだけだと告げ出て行ってしまう。  あの教師、今日初めて会話したが何処となく嫌いだ。何がとは明確にはわからないが嫌な感じがする。  他の教師のように媚び諂ってくるわけじゃない、それなのに不快感がある。合わない人間なんて何処にでもいるが、あれとはどうにも合いそうにない。  揚げ物ばかりの弁当は満腹になり残してしまった。帰った時に澤谷に謝らなければ。  教室に戻るにも誰かに手を借りなければ行けない。渡り廊下の段差すら抜けられないため昇降口に行こうにも、昇降口すら段差があるから登れない。  今時こんなにも車椅子移動が困難な学校あるのだろうか。段差を上がった先にはスロープを用意しているくせに、つくづく変な構造だなと思ってしまう。  保健医に教室に戻れないから此処で自習をしていてもいいか聞けば快諾される。だからと大人しく鞄に入っていた英語のワークを取り出した。  誰とも喋らずにいていいのは楽だが、勉強だけに集中することはできず考えてしまうのは昼休みのこと。  他人の考えなんてどうこうできない。相手の抱いているものは違うが澤谷に言ったこと。  どうにかできればいいのに。  雑念を振り払うように頭を振り、わざと時間をかけながらワークを進めていく。  人と話がしたい。でも保健医とは話すこともない。誰かと、……光か時雨と話がしたい。でもあの二人とは喧嘩中だ。  ……寂しい。  依存しているのを隠しもせず、考えるのはそんなことばかりだ。

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