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第21話 -11

 暫く悟志を構い続けていると、流石に昼休みの時間も過ぎていく。  残り20分を切った頃になって、悟志はずいと膝の上に置きっぱなしだった弁当をよこしてきた。 「もう食えないからやる」 「半分も食べてないじゃん。ちゃんと食わないと」 「……お前が構ってくるから」 「時間経っちゃったからお腹いっぱい?」  こくりと頷きながら渡してくるそれを受け取り、仕方ないなあと言いながら箸を掴む。エビフライとコロッケと唐揚げ。悟志がこんなに食べられないのなんてわかるだろうに、ここまで男臭いラインナップになるとはその護衛は悟志を何もわかっていないんじゃないか。  時間もないしと大口を開き次々とおかずを口の中に放り込み、白米はかき込む。光程ではないが威勢のいい食べっぷりに、悟志はずっとその様子を眺めてきていた。 「ごちそうさま。明日から昼は一緒に食べる?」 「……嫌でなければ」 「俺は大歓迎。他はどうだか知らないけど。九条こそ、他人と食いたくないとかない?」 「俺は、……全員で、じゃなければ」  やはり、人数が多いのは負担だったのだろうか。歯切れも悪くそう零す悟志に、ならば暫くは自分と2人で食べようと持ちかけた。  自分も光と喧嘩をしてしまっていて、少し前から1人で食べるようになった。今日の早弁もそれの影響。  また明日も、此処で。そう言えば、悟志はこくりと頷いた。 「食後の運動に部室行かない?」 「時間ないだろ」 「冗談だよ。キスだけでじゅーぶん」  弁当も片付けて、正面から覆い被さることができる。時雨は階段に押し倒すような格好で、悟志とまたキスをした。  互いの口は揚げ物の味がする。それでも気にせず、互いに互いを貪りあった。

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