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第21話 -12

 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り、悟志とは別れた。また話ができたことが嬉しくて、時雨は上機嫌に教室へと戻る。 「伊野波、カノジョと仲直りしたんだってー?」 「まあなー」  あまりに時雨が悟志に構い続けていたからか、一部の男子は2人のことをそうやって揶揄うようになっていた。皆冗談だと思っているから自分も敢えてそこに乗る。  本人や光が聞けば確実に怒る。光の悟志への執着具合も大部分には認知されているから、冗談を本気で受け取る光の耳には入らないように。  自分と悟志がセットで扱われるのは気分がいい。明日からまた一緒に昼食もとれるしとにこやかに笑いながら授業の準備をしていると、待ち構えていた女子達に捕まった。 「くじょーくんにうちらのこと何か言った?」 「九条も気にしてなかったし何にも?」 「彼女いるか聞いてよー!」 「俺以外に興味ないって」  冗談を盾にすれば、女子達も避けられているのは理解する。怒らせるのは面倒ではあるが、お前らなんかに教えるかと時雨は突っぱねた。  彼女はいない。彼氏候補ならたくさん。まあ本人は恋愛には興味がないようだから、候補は候補のまま終わるのだけれど。  現代文の授業は退屈だ。くるくるとシャーペンを回して遊びながら、悟志の席をちらりと眺める。  早く帰ってきてほしい。けれど、帰ってきたら女子達が邪魔してくるだろう。  歩けるようになるまで、一体どれくらいかかるのだろう。また、一緒に歩きたい。  今度は誰にも、何にも邪魔されることなく2人きりでデートがしたい。  修学旅行まであと少し。もしまだその時も歩けないようであれば、自分が一番傍にいてあげたい。  光でも市倉でもなく、自分が。

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