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第21話 -13

 翌日。  悟志は時雨同伴のもと、中庭で光と対面していた。車椅子だからいつもと視線は逆になり、光が真っ直ぐに見下ろしてきている。いつもの柔らかく可愛い笑顔はなく、無表情そのもの。  怖い。ここまで怒らせてしまったことに、不安と焦りが生まれる。  悟志が何を言えばいいのか言い淀んでいると、先に光が口を開いた。 「しぐとは俺より早く仲直りしたんだね」 「……昨日、偶然会ったから」 「へぇ。それで? 何か用?」 「……あ、の、……謝り、たくて」 「何を? さと、何か悪いことしたの?」  していない、と思う。悟志はふるふると首を振り、でもと弁解を口にした。 「光が、怒ってるから」 「俺が怒ってたらさとは何もしてないのに謝るの?」 「……俺が何か、怒らせたんだろ。理由が知りたい。それから、謝りたい」 「……もー、ほんとにさぁ」  さとはいい子なんだから。光は困ったように笑い、悟志の足元に膝をついた。 「俺はただ妬いてただけ。怒ってないよ。さとが、俺以外の男の人と仲良くしてるのが悔しかったの」 「くやしい?」 「そう。だってさとのまわり、俺以外はみんなイケメンなんだもん。ちんちくりんなんて嫌いなんじゃないかなって思って、じゃあさとの周りうろうろしてる俺は邪魔なんじゃないかなって」 「……そんなことない」 「あるのー。……さとは、自分より大きくてかっこいい男の子に抱かれたいの? 俺なら、他の誰よりも気持ちよくさせてあげられるよ」  周囲に集っている女子達には聞こえないように囁けば、悟志だけでなく最後の時雨も反応を示す。  そんなことない。けれど、もう抱かれはしないと市倉と決めた。悟志は黙って首を振った。 「……やっぱり他の人の方がいいんだ」 「ちがう。市倉と、もう他の人とはしないって」 「じゃあ市倉さんともしてないの?」 「……それは」 「説得力ない保護者だね。ただ俺達を遠ざけたいだけじゃん。市倉さんはさとを自分だけのものにしたいだけだよ」 「……伊野波」  違う。市倉はそういう人間じゃない。  でもしているのは本当のことで、どう切り返せばいいのかわからず時雨を見上げる。  時雨は、その言葉を聞いて苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。 「こればっかりは俺も光の言葉に同意見かな。九条、俺とはしないって決めたのに」 「……したら、市倉、俺に優しくなるから」 「俺もしぐも、しなくてもさとにはずっと優しいよ。さとが他ばっか見て俺達のこと蔑ろにするから優しくできなくなるんだよ」  でも、だって。  悟志はどう言えばいいのかわからなくなる。  どう言葉を選べばいいんだろうか。周りにいる女子達に聞こえてしまうかもしれないから下手なことは言えない。  ちらりと周囲の様子を眺め、2人に視線を送る。どう伝えるのが1番いいんだろうか。悩み頭を抱えたくなっていると、よしと時雨が突然車椅子を動かした。 「サッカー部の部室行こ。光も部員だし九条は入部未定のマネージャー候補ってことで。そこならゆっくりちゃんと話できるだろ?」 「……わかった」  他に聞かれる心配がないなら、多少は気が楽になる。  それにしても、部室か。時雨に抱かれるために連れて行かれたことしかない場所だ。  少しだけ、思い出してしまった。

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