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第22話 -1
2人、と。
悟志は混乱したままされるがままになった。
自分の頭の上で言い争いをしているが口を挟むことすらできない。
「お前とやる気ないから出てってよ」
「いーや。お前と2人きりでイチャつかれるくらいなら3Pの方がマシ」
「さとがいいならいいけどお前発案なのが嫌」
「九条、俺と気持ちいいことしよ? 嫌なら光は追い出すから」
「抜け駆けすんなばーか!」
夏服に変わって、悟志も薄着になっていた。寒いと思う日には夏用のカーディガンを羽織っているが今日はシャツ1枚。インナーも着ていない。
そんな服の隙間から指を差し込まれ、時雨に甘い声で強請られる。悟志は、その手を掴んで止めた。
「2人、とも」
「ん?」
「なぁに?」
「……俺のこと、どうしたいんだ?」
「さとが、俺がいなきゃ生きられないくらいに甘やかしたいと思ってるよ」
「俺は九条に、……悟志によそ見できないくらい俺のこと好きになってほしいな」
「だめだ、そんな、俺、もっと駄目になるから」
抱きたい、と身体目当てなことを全面に出されていれば拒絶のしようがあった。
でも2人は、2人ともが、自分を駄目にしようとしてくる。2人がいないと生きていけないとさえ、錯覚させようとしてくる。
悟志の言葉に、光は後ろから小さい身体で抱き締めてきた。
「駄目になってよ。さとが駄目になっちゃうくらいにずぅっと甘やかすからね」
「……ひぃ」
「光は幼馴染の分アドがあるみたいだけど、高校入ってからは俺の方が仲良いもんな。なぁ、悟志」
「な、まえ、だめ、駄目だ」
「別にいいじゃん。俺のことも名前で呼んでよ、お願い。悟志の人生でデートしたのだって俺だけでしょ?」
「でー、と」
「まああの人もいたけど、俺と2人で買い物したじゃん。あれ、俺はデートだなーって思ったんだけど悟志は違う?」
「……ち、がわない、と、おもう」
半ばパニックになりながら、辿々しくも時雨の言葉に返していく。
デート。あれはデートだったのか。確かにこれまで読んだ本には、2人きりで出かけるのはデートだと書いてあった。市倉は近くにいたけれど、護衛中は人間だと思わないようにと言われてきた。
つまり、あれは、デート。
悟志の態度が気に食わないのか、光はむすっと拗ねた顔になる。そしてまた、顎を持ち上げさせキスをしてきた。
「さとのファーストキスは俺とだし、2人きりで会ったりカフェ行ったりは俺もしてるよね。いつだったかさとがゲーセンにいたとき、一緒にカフェ行ったじゃん。あれはデートじゃないの?」
「……あれは、逃げてた俺を匿っただけだろ? 2人で出かけたわけじゃ」
「もー、むかつく! さと、ごめんね。もう我慢の限界だからしちゃうよ」
「馬鹿、馬鹿、ひぃ、だめ」
首筋に唇を押し付けられ、悟志はその頭を退けようと手を動かす。
その手は光の頭には触れず、時雨に指を絡めて掴まれてしまった。
「何で駄目か、教えてくれる?」
「……2人からなんて、贅沢だろ。俺はそんなにしてもらっても、返せないと思うから」
「えー? さと、そんなこと考えてるんだ。俺としぐ2人に愛されるのがさとにとっては贅沢なの?」
「だって、そうだろ。俺は、そんなに良くしてもらえるような人間じゃ」
「しぐ、やっぱ前言撤回。3Pでもいいや、もうこんなこと考えられなくなるくらいさとのこと甘やかそ」
「おっけー。悟志にとって俺達とするのはご褒美同然ってことなんだ。嬉しいな」
ちゃんと言わなければまた誤解されてしまうと思ったから、言ったのに。
悟志の本心での言葉は、ただ2人を燃え上がらせるだけだった。
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