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詰問
「そういえばさあ…」
唐突にそのオーラを潜めて話し始める副会長に、なんだよ、オラという顔をする。その前に、いい加減手を話してくれ。
「この前、我が学園に不届き者が侵入したようだけど」
「シキはそのこと、知ってる?」
「…………いえ、初耳です。」
「狙いは、この学園に在籍する、一年の王族の血縁者だったみたいだね。
結果は、第七師団が解決。敵は捕縛され組織は壊滅状態だとか」
「…はあ」
「なにより今国民の注目が集まってるのは、第七師団三番隊が中心となって動いたってところ。今まで裏の仕事ばかりしていたのに、あのダガーが遂に表舞台にって騒がれてるよね」
汗が背中を伝う。
え、この人なにが言いたいの
「それで、この生徒が連れ去られた日。
もう1人この学園からいなくなった人物がいるんだけど」
おぉっとお…?雲行きがあやしいぞぉ?
「話は変わるけどちょうどその日、君は新歓の特典で獲得した外出届を使用したね?」
そう。実はあの日抜け出したのが昼間でどうにも誤魔化せず、後から外出届を提出した(シノに頼んで)。……夜だったらバレずに済んだんだけどなあ…。いつも俺が任務で学園を抜け出す時は大抵夜に抜け出し早朝に戻るのに、今回はアイツらが真昼間に事件を起こしたせいで、こればかりはどうしようもなかったのだ。
「そういえば、先の練習試合。あのダガーの隊長さんと君、体型がよく似ているね?偶然かなあ?」
「先の練習試合…?それは、俺が転入してくる前のことですか?」
「そうだね」
「俺はダガーの隊長見たことないんで、体型とか知らないですけど。」
この前コイツと仲の良い会長サマが、俺を探していると言ってたな…コイツにバレたらやばいんじゃないか…?
「…あと、純粋な疑問ですが、何故副会長はその件に関して詳しいんですか?」
……バレるので、こちらもあまり突っ込んで質問はできないがターゲットがノアだったことは公表されていないはずである。そもそも、外出届なんて寮長宛だから生徒会に直接行くことは無いはずだ。…わざわざ調べたのか?
「まあ、君に質問しておいて俺が何も言わないというのは不公平だからね。
親切な俺が答えてあげようか。
俺達生徒会っていうのはいわば実力者の集まりなんだよ。つまり、学園トップクラスの人間が集まるんだ。だから、実戦に参加したり、自警団として活動したりするんだ。まあ、本当に少しだけどね。見習いみたいなものさ。
だから、自警団にはツテがあるんだ」
……えー、俺それ知らねえわ…。じゃあいずれ、コイツらと俺は共闘したりすんのかな…。
というか、そのツテってなんだツテって!!軍事機密バラしてんじゃねえぞ!!
「………………随分、自己評価が高いんですね」
「事実だからね。」
絞り出した言葉をさらりと躱される。
「自警団内でも、ダガーの隊長を知っている人物は少ない。他の隊員は何名か他の隊と交流があるのか、顔が知られているけど。
隊長を知っているのは、各師団長と第七師団団員のみ。その隊長様は随分過保護にされているようだ」
……随分な物言いだな、仮にも上司だぞ?
「俺は違いますよ?そんな、俺弱いですし。隊長になれる器じゃないですって。」
コイツに言うのは癪だ。なんか腹立つ。
「じゃあその日はどこに行っていたの?」
「親戚の葬式です。」
というか、いい加減離せ!手を!!
「ふぅん…」
「あの…手、離してください」
俺がそういうとさらに手を絡ませ逃げられなくする。副会長は顔をグッと近づけ俺の顔を覗こうとする。
「タクトは顔を見たみたいだから、お前の顔を晒してタクトの前に突き出してやってもいいんだけど?」
「…俺の顔なんて、見るに耐えないモンですよ」
「俺は楽しいよお?」
「副会長は、なんで、そんなに、知りたいんですか」
すると、副会長は俺の頰を手で包み込む。
「………知りたいなら、お前も教えて」
そう言って、副会長はベンチから立つと颯爽と中庭から去っていった。
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