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僕を使って

「おい、シキ!眠いんか?」 ノアの声で横にいる鬼と化した彼に気づき、苦笑いを返す。 「……ノア、お前ホント教室とキャラ違うよな」 隣にいたシノも苦笑いをしつつ、ノアに物申す。 「うるせえ。俺は今そんなことが言いたいんじゃねえ。じゃあ言うが、オメエらはあっちのぶりっこの方が好みだってか?」 外見は美少女中身はほぼヤクザ同様のノア様に慄く。 「そんなこと言ってないだろ。そういえば、クロは?」 「親衛隊の仕事代わりにやらせてる」 そう、ノアが返すとシノが反応する。 「は、アイツ副会長の親衛隊に入ってんの?」 「俺がいるとこにゃアイツもいなきゃなんねえからな」 ちなみに先の事件後クロはお役御免かと思われたが引き続き護衛が必要とのことで以前俺たちの関係は変わらないままである。いや、良い方に変わったとは思うけど。 「それで?シキはどうかしたの?」 再度聞き直してくるノアを見つめ、どうしたものかと悩む。 「あー…いや、そういえばノアって副会長のこと詳しかったりするの?」 「副会長?まあ、一応親衛対象だしね」 「そうだよな、どんな人?」 「うーん、まあ王子様キャラやってはいるけど腹黒を隠しきれていないというか隠すつもりもないというか…」 「あーそれわかるかも、副会長ってさ愉快犯みたいなところあるよな」 シノもこの学園の生徒らしいというか、少なくとも俺よりかは知っているようだ。 だけど、それは俺もなんとなくわかっている情報だしなあ… 「あとお兄さんがいるよね」 「兄…?」 「うん、今自警団にお兄さんがいるよ。てか、シキ。隊長なんだから、わかるだろ?」 「俺はそういうの知らないんだよ」 「シキの場合、知らないというよりかは興味ない方だと思うけど」 「……如何にも…」 「まあ自分も自警団として活動したりするみたいだけど」 兄がいる、というのは知らなかった。自警団に兄、か。この兄というのが情報源か? だけど、さっき副会長は"今回のターゲットは一年の王族の血縁者"と言っていた。つまり、そこまではわかってはいるがノアとは断定出来ていない…? 頭が痛くなってきた。 「……それで?まーた手が止まってますけど?シキさん?」 そのノアの不機嫌そうな、というか不機嫌全開の表情に俺は「てへぺろっ」と真顔で返す。 「シキが何抱えてんのか、知んねーけど!!今は俺達と勉強会!!明日テスト!!わかってんの!!」 「ほーら、シキのアホ。ノアが拗ねるから集中。」 「ハハ、ごめんて」 すると、丁度部屋のチャイムが鳴った。 「あ、多分クロだろ。俺が開けてくるわ」 シノが席を立つ。 すると、ノアが口を開いた。 「俺さ、今まで自分のためだけにこの権力ある立場に着いたけどさ。今微力かもしれないけどシキの役に立つ立ち位置にいるはずだから、俺を…」 そう言い掛けたノアの言葉を遮るように俺はノアの頭を右手でぐしゃぐしゃとかき混ぜた。 「わっ、やめろって!」 「ハハッ、…ありがとな、ノア」 少し小声ではあったがこの距離なら聞こえただろう。耳を赤くしたノアを見て満足する。 俺を、利用してくれ。 ノアが言いたかったのはそんなことだろう。 すぐにシノとクロが入ってきて一気に部屋が騒がしくなる。 「おー、クロおつかれ」 「…人使い荒いんだよ、コイツ」 「だってぇ〜、僕じゃなくてもいいお仕事だったし〜、僕とクロだったらシキに教えるのが適してるの僕でしょ〜?」 ぶりっこモードに切り替えてクロを責めるノアは鳥肌モンである。クロも顔が引きつってる。 「わぁーったよ、んで?進んだのかよ?」 「それがさー、シキがボーッとしてるんだもん、全然進まないの」 「そのキャラやめろ。隊長、じゃねえや。シキ、ノアがまた邪魔かなんかしましたか?」 「してねえっつうの!!クロ、ハウス!!」 「俺は犬じゃねえ!!!」 いーや、お前はノアの立派な忠犬だよ。と思いつつ そうして俺達は夕飯の時間まで、明日のテストに備えるのだった。

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