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カミサマ

「今回は長期戦だと思え」 「はぁ…」 「あの自称超能力者集団の時の方がマシだ。」 「え、そんなですか」 トーカの言う自称超能力集団とは俺達三番隊が以前壊滅させた反社会集団であり、「自分達は選ばれしもの」とか言って詐欺行為を繰り返していた。実態はただの犯罪者の集いだったが。個々に対して困ることは無かったがなにせ人数が多すぎて壊滅まで持ち込むのが大変だったのだ。 その時は、連中の頭を見せしめにして降参させたのだが、それから奴は俺と会う度にぶってくれだの罵ってくれだの、Mに目覚めてしまった。 「今回はカルト宗教集団だ」 まーた厄介なそうな… 「奴らはこの国に昔から存在している、被害者が出る度に捜査が行われているようだが必ず逃げやがる。」 「被害?例えば?」 「 信者の女子供を売る、暗殺、そして子供を使って人体実験を行なっているらしい」 「そこまで、わかっているのに何故今まで…?」 「必ず証拠が消える」 「証拠が…消える……?」 「要するに、人間ごとぐしゃっと」 「ぐしゃっと」 トーカが片手で物を握りつぶす動作とともに「ぐしゃっと」なんていうから思わず復唱してしまう。 ご苦労なこって…と悪態をつくとトーカが鼻で笑った。 「……かしこまりました。では、データは後でニイロさんにお願いします。セイは後で俺の部屋来て」 「じゃあ、俺はここで。失礼します」 そう言って、セイは先に退室していった。 「……それで?トーカは俺に何か言いたいことがあるんですか?」 「ふっ、わかるか?」 「もうわかりますよ」 「まあ今まで捌いた仕事だって厄介な物ばかりだったが、今回はもっと厄介だと思え。宗教ってのは、時に人間を狂わす」 「………アンタがそうやって助言を言うのは珍しいですね。でも、この国には神がいるという事が事実として人々に認識されている。これは話が違うと?」 「あぁ、そうだ。それは単なる事実に過ぎない。神が全てを創造し、今もこの世界の何処かに存在する、ただそれだけだ。だが、カルト教団はまた違う。神に縋るんだ。場合によっちゃ教祖つまりそれはただの人間だ。それはほぼ人が人に依存し、己をソレに委ねる。」 「……」 落ち着いた静かな声で話すトーカに言葉が詰まる。 「それによって起こる現象はなんだと思う?」 「………判断能力を自ら手放す……?」 「結果として、そうなる。カルト教団の恐ろしさはそこだ。人を麻痺させ従わせる。つまり、価値観がその集団の中に1つしか存在しなくなる訳だ。そうなった時の"集団“程怖いモンはねえ。奴等に倫理観なんざ通用しねえし、己の正義、いや神の為ならなんだってできる。」 「神の為なら…」 トーカは俺の目を見据え、俺の思考を固定させた。 「シキ、お前は飲まれるなよ。いろんなモン見て考え続けろ。」 「………はい。」 部屋からでていこうとする俺の背に向かってトーカはまるで独り言のように言った。 「アオに気をつけろ」

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