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神の祝福
俺の身体は落ちて落ちてーーー、何か重いものが水面に沈んだような音が耳元で聞こえる。
目蓋が重くて重くて上がらない。
重くてたまらない目蓋にあがらうように、左目をそっ、と開ける。
そこは、まるで海の中だーー、
光が水の中に降り注いでいる。
でも、落下を続ける自分の身体は光から遠ざかって、手を伸ばそうにも俺の身体は指の先まで麻痺している。
光は遠ざかっていき、俺は群青に包まれる。俺の目蓋は閉じているはずなのに目の前には青々しく広がる景色が視える。ーーあぁ綺麗だ。
このまま、身を委ねてしまおうか、いや、
まだ、『 』
そう思った瞬間、身体に力が入ったーー、
***
「っっ…!っぷはぁっ……!!?」
いきなり肺に空気が流れ込み、驚いてしまった。
俺は今の状況が飲み込めず、周りを見渡すといろんな人が俺を囲んで見つめている。……な、なんだ。新しい宗教か?
え、え、なによ、みんな驚いてる顔してるけど、俺もびっくりしてるんだけど、
「シ、シキ~~~~!!!」
「っへ、なにッブベラ!!」
唐突にエルから右ストレートを喰らい、変な声が出る。直後抱きつかれ、なにがなんだかわからない。
「え、めっちゃほっぺ痛いんだけど、なんで今俺殴られたの………?」
おいおい、と俺の胸で泣くエルの頭を撫でながら周りにいる人達に尋ねる。
何故今俺は殴られたんだよ…親父にも殴られたことないのに……!!
誰も答えてくれないので、セイに視線を向けると、俺かよ、と小声で文句が聞こえる。俺かよ、じゃねえよ。お前そういう役回りだろうが。
「今、お前死にかけてたんだよ」
「え、じゃあなに俺今ユーレイ!?」
「ちっがうわ!!」
と、唐突にレイスからデコピンをくらう。
「いっっった!!レイス!!痛えわ!!」
俺が怒鳴ると、レイスは赤い目元を隠すようにそっぽを向いてしまう。
「………俺達は今医者からてめぇが死ぬって聞いてたんだよ、どうすることもできないって、原因もよくわからない、あと二、三時間でって……」
「レイス…………」
「なのに、……………言われた直後にお前が普通に起き上がったらびっくりすんだろーが!!!!!」
「イダダダダダダダ」
俺は今さっき殴られたばかりの頬を抓られる。理不尽だ。これ、DVだろ!!ドメスティックバイオレンスだ!!!!
「痛い痛い痛い、はーなーせー!!!」
腕の中のエルまでもが胸を思いっきりボカボカ殴ってくるので地味に痛い。俺がいるベッドの右側にいたライトまでもが俺の右肩を同じように泣きながらボカボカ殴る。いてーわ。
セイは俺の背後にまわり、後ろから俺の頭を拳骨で、グリグリしてくる。痛い痛い痛い!!
てめーは、み◯えかよ!!!俺はケツだしたりしねぇぞ!!!!
俺はみんなにもみくちゃにされながら、気づいた。
みんなちょっと泣きそう、ってか泣いている。この様子を見守ってるニイロさんは爆笑してるけど。
俺はふと、気づいた。アレ、アオは………?そう思い部屋を探すとこの円から少し離れるように立つアオ。
アオはこちらの視線に気づくと、少し鼻を鳴らした。
俺が口パクで「おいで」と言うと、アオは少し泣きながら、いや、かなり泣きながらガバッと円に突っ込んできた。俺はみんなに押し潰されながら、ニヤニヤしていたと思う。いや、正直に言えば泣いていた。
みんな泣きながら、泣いていたと思う。
***
どうやら、この任務は解決と国は判断したようだ。
だが、まだ問題はいくつかある。
フォレストはどうやってあの呪いを知ったのか、ということ。アレは相当やばいものだった。
空間を歪ませ、人形を操り、洗脳し、人を殺す。
これは引き続き調査されるようだった。
そして、あの少年とアオは検査を今受けている。
なにもないといいのに………。俺はそう願うことしかできないんだ。
果たして、あの力はなんだったのだろうか?
アオと少年に宿る『神の力』やフォレストが言っていた『呪い』この二つは未だ謎が多く残る。
そして、これはまだ誰にも言ってないが、俺の背中の肩甲骨から腰に掛けて模様のようなものができている。左右模様も色も違う。たまにジクジク痛むので鏡で背を見てみると、できていた。……………これは、なんだ。厨二病を発症してしまったのか………?なんか宿ってんのか…………?
この任務は大変後味の悪く、なおかつ謎が多く残る任務となってしまったのだ。
トーカは俺の顔を見た瞬間に、
「………てめぇ、しぶてぇな」
とか言っていたけど、もう少し心配してくれたって良いのになあ?いや、あの人に心配されたら逆に恐ろしいか。恐ろしいと言えば、セツカが無言で抱きしめてきたことも恐怖値爆上がりだったけどな。
この任務で第三師団とダガーが協力することは有益と判断されたのでこれからも共同任務が増えるだろう。
アンさんと今度ご飯に行きたいな。
第二章・終
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