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黒の独白

ーー第七師団三番隊隊長、シキ。 まだ俺が正式に第七師団に所属していた頃、彼は突如として俺達の目の前に現れた。 13歳だという彼は、彼の同年代の子供と比較しても細く、小さいものだった。 その特徴的な黒髪は、その瞳を引き立てるように純粋な黒で、瞳の黒はすべてを悟った目をしていた。 トーカ団長がやけに気にかけているようで、しばらくの間トーカ団長とシキのふたりでどこかへと行っていることもあった。 シキ単体で、自警団にいることも多くなったころ、彼は見た目とは反した戦術と戦闘能力で、任務も任されるようになる。その頃には俺の上司として、その手腕を発揮していた。 そして今、その小さな背中で全てを背負っている。 俺はノアの護衛のために、第七師団から離れていた。こうして、隊長の近くで戦闘をするというのは、久方ぶりだ。 初戦もあっけなく終わってしまったが、その鬼神ぶりがまたこの目で見れたことがとてつもなく嬉しかった。隊長にとって、一年の相手は赤子の手を捻るようなものではないか。相手のチームが少しかわいそうに思えてきた。 隊長が急に「勝ちに行く」と言い出したのは、ノアが制裁にあった日の放課後のことだった。その時、ノアはいなかったがなにかしたの理由があったことは明白だろう。 当初の予定では、トーカ団長に文句言われない良い感じのところまでいって負ける気だったみたいだから、話してはくれないその理由にどれだけの重みが詰まっているのか。 口下手な俺には、隊長に気づかいの言葉ひとつをかけてあげることはできないけれど、それでも彼の手となり足となり死んで行ければ本望だと思う。きっとそれは三番隊の総意と言っても過言ではないのだ。 この三番隊からの重い愛を、隊長は理解していない。 特に、他人の感情には鋭いくせに他人から向いた感情には鈍い。しかも、やっと気付いたかと思えば、マイナスな方向に捉える。 …俺に言われたくないと思うが、隊長も大概面倒臭いやつなのだ。

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