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共犯者
アオの予言のようなものは的中し、すぐに学園の任務に戻ることとなった。学園に戻った足ですぐに向かったのは、生徒会室。話をつけに行かなくてはならない面々がいるのだ。
やはりこの学園は無駄なものが多い。たかが生徒会室にこんな装飾のついた扉はいらないだろう。いつ来ても不愉快な場所だ。
ノックをし、返事が帰ってくる前に扉を開ける。
「失礼します」
部屋の中を見渡せば、生徒会役員が揃っている。皆、それぞれの表情で俺のことを見ているのがわかる。会計と書記は微妙だけど、会長と副会長にはすでに正体は知れているのだからどう転んでも腹を括るしかないのだ。新調した眼鏡を外して長い前髪を分ける。
「…改めまして、自己紹介をさせていただきます。第七師団三番隊隊長のシキです」
「第七師団三番隊って、あのダガーの…?」
会計の問いに肯定で返す。
「なんであのダガーの隊長さんがうちの学校にいるわけ?それも生徒に扮して、極秘任務なの?」
「まあ俺は15なので、学年を誤魔化してるわけじゃないですよ」
「それで、お前は何をしに来たんだ」
会計と俺の会話に会長が割り込んでくる。その目はこちらをまっすぐ見つめている。
「そうですね、本題に入りましょう。学年を誤魔化していなくても、俺はこの学校では肩書を隠して生活している。それは、これからもそうです。つまり、貴方達には共犯者になってほしいんです」
「つまりわざわざ口留めしに来たってか?ご苦労なことで」
やけに突っかかってくる会長を真っ直ぐ見つめる。
「ええ、そうです。わざわざ来てやったんですよ」
どうもこの男に煽られると、煽り返したくなってしまう。生徒会室の空気がビシッと固まった。
「へえ…?それで?ダガーの隊長様は、なんでそんな肩書を隠したがる?お前のその肩書をバラせば親衛隊からの舐めた真似をされないだろ?」
なるほど、この男がずっとそれが気になっていたのか。
「俺がこの学校で肩書をバラした時のメリットとデメリット、どちらが多いかわかるだろう。レクサ家長男。確かに、この学校で肩書をバラせば、ビビッて無駄に絡まれることはなくなるだろう。だが、実際デメリットの方が多い。」
それくらい言わなくてもわかるだろう?と言外に含めて言ってやる。
実際、前回のように自警団の卵の彼らが襲われた時、迅速に対応するならば俺は身分を明かさない方がいいのは明確だ。敵を騙すなら、まずは味方から、だ。
前だって、ダガーの存在自体が隠されていたのだ。今では、ダガーの名前のみが一人歩きしてほとんど都市伝説のような捉え方をされている。
つまりは、正体を知られていない方が公には動けないものの、勝手がいいのだ。
何も言わなくなった会長を一瞥して、副会長を見遣る。俺の視線が向いたことに気が付いたのか、あからさまに動揺してみせる。
「副会長」
座ったままこちらを襲る襲る見る副会長は、綺麗な顔をしているからかわいく見える。
…俺もこの学園に毒されてきた…。
「はい、なんでしょう」
「第二師団団長が無事意識を取り戻して、リハビリに励んでいるみたいですよ」
ご存知でしたか?と聞くと、首を横に振る副会長に「良かったですね」とだけ言って、生徒会室を去ろうとした。
「待って!」
副会長に呼び止められ後ろを振り返る。
「……なんで、なにも言わないんだよ」
きっと自分がハスに唆されて、学園侵入の手引きをしたことを言っているのだろう。確かに、本来ならば退学どころでは済まなかったのを、事情が事情だけに理事長が緘口令を敷いたのだ。
この人もめんどくさい人だな、と溜息を吐くと、副会長はまた肩を強張らせる。
「俺はアンタに怒ればいいの?」
そう聞くと戸惑いの表情を見せ、また首を横に振った。
「じゃあ別にいいんじゃないんすかね、俺は別に怒ってないし」
何の話をしているかサッパリだ、という顔をした会計と書記を見る。
「アンタたちも生徒会役員なら、俺と共犯者になってくれますよね?」
頷いたのを確認し、ドアノブに手を掛ける。
「おい、待て」
…なんだよ、この部屋は。「○○しなきゃ出られない部屋」か何かか?全然外に出してくれないじゃないか。俺を呼び止めたのは明らかにバの会長で、全くもって振り向きたくない。
「お前ら、出てけ。俺はコイツと話がある」
俺はねーーよ!!と内心シャウトする。
大人しく会長サマに従って出ていく役員たちの背中を睨みつけた。
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